漫画方丈記(鴨長明)
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漫画 信吉
時代考証 吉野 朋美中央大学教授
巻末に方丈記の原文と養老孟司による解説を収録。
昨年(2021年秋)出版された新刊です。
(小学館からは水木しげるが漫画化した方丈記も出版されています)
「ゆく河のながれは絶えずして、しかももとの水にあらず。」という冒頭は有名ですが、多くの人は内容を忘れてしまっている方丈記(鴨長明)。
意外なことに、わずか20ページから30ページぐらいの短い随筆です。
漫画化にあたり、「日本最古の災害文学 」と、これまた意外なサブタイトルが付いています。
大河ドラマ、鎌倉殿の13人で描かれている時代です。
その時代には、大火、大風(竜巻)、地震、飢餓と様々な災害が日本を襲います。
また遷都の失敗という人災も。
年老いて小さな庵(いおり)で暮らしている鴨長明が、様々な災害を振り返るのが前半の内容。
また若いころは、京の都の立派な屋敷で暮らしていた鴨長明が、晩年は山の中の小さな庵で、質素な暮らしをするようになったことが、もう一つのテーマ。
多くの現代人とは異なり、鴨長明は、災害を経て、物に執着しない生き方を選びます。
また方丈記では、源平争乱については一切触れていないとのこと。
戦争の記憶は比較的長く保持される一方で、戦争中や前後の災害は、記憶されにくいと思います。しかし、あえて自然災害や政治の失敗に関する記録を、文章にして残しています。
高校生が読むにしては、内容が暗すぎるかもしれません。しかし大人になってから読むと味わい深い内容だと思います。