図書館、居場所、サードプレース
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シングルマザーになった水季(古川琴音)は小田原中央図書館で働いていたという設定。大学を中退したシングルマザーに、待遇の良い仕事は少ないという日本社会の現実を連想する。しかし、このドラマでは、そこには深入りしない。娘の海(泉谷星奈)が、まだ小学1年生ということもあって、貧困とか貧窮家庭という描かれ方はしていない。水季(古川琴音)の同僚で、図書館で働いている津野晴明(池松壮亮)。彼は夏(目黒蓮)や弥生(有村架純)に刺(とげ)のある言葉を投げかけるシーンもあるが、それは、彼、津野晴明(池松壮亮)、個人の性格の問題であって、職場が図書館だからというわけではない。
ドラマに登場する小田原中央図書館は、綺麗な建物で開放感もある。国会図書館のような研究目的ではなくて、親子連れなどの普段使いには十分な広さもありそう。子どもたちに絵本の読み聞かせをするためのスペースもある。
図書館は居場所なのか問題
図書館は居場所なのかという問題がある。
図書館は居場所と言う主張には、海(泉谷星奈)のような子どもに気軽に利用してほしい、中学生や高校生などの勉強の場に図書館を活用してほしいと言った考えを言外に含んでいる。
その一方で単にやることがない高齢者、あるいは高齢ではなくても無職などでやることがない人が、文字通り居場所として一日中図書館で時間をつぶすことには批判的、否定的な見方もある。また表立っては議論しにくいが、(完全なタブーではないが、タブーに近い問題として)知的障害、発達障害、精神障害のある人の居場所として一般的な公立の図書館はふさわしいのかという話もある。
ちなみに国立国会図書館は居場所としての図書館利用に否定的である。国立国会図書館はテレビゲームも保存しているが、あくまでも歴史的な資料として保存しているのであって、ゲームを楽しむ居場所のように図書館を利用することは拒否している。一方海外、特に北欧では、一般的なおもちゃだけでなくて、ゲーム類を貸し出している図書館もあるという。図書館に、どの程度居場所的な機能を持たせるのかは、図書館における大切なテーマと言えそうです。
図書館では寄付を受け付けていることもあります。ユニクロの柳井正とか、ソフトバンクの孫正義のような人は10億円単位での寄付がニュースになったりしますが、東京都目黒区では、ふるさと納税を活用した公立図書館への寄付も受け付けています。図書館に寄付する人の中には、図書館の居場所的な役割を評価している人もいるのかもしれません。
図書館の役割をどう考えるのかは色々な立場がありますが、図書館を第3の居場所、サードプレースと考える立場もあります。第一の居場所は家庭、第二の居場所は学校や職場、それに加えて第三の居場所がサードスペースです。具体的には図書館とか喫茶店、最近はACジャパンのCMでもやっている子ども食堂など。居場所づくりが大切という場合の多くは、新しいサードプレースを作ろうと言う活動と関連しています。
海のはじまりでは、海ちゃんに新たな第三の居場所(サードプレース)が生まれるのかも気になります。