ご無沙汰しています。
今回は、日常的に使う単語「叱る(しかる)」と「怒る(おこる)」について
怒ると叱るは違うという話があります。
「今は怒っているんじゃなくて叱っているんだ」と言ったりします。
そして「叱るのは相手のことを思って叱ってるんだ」と付け加えることも。
ちょっと気になったので、たまたま近くにあった子ども向けの辞書を引いてみました。小学生向けの辞書では、「叱る」と「怒る(おこる)」は基本的に同じ意味と説明されていました。もちろん、怒る(おこる)には、「いかる(怒る)」という本来の意味もありますが。
大部分の大人は、叱る(しかる)と怒る(おこる)を使い分けているのに、小学生向けの辞書では、同じ意味とされているのは、なぜか?
この理由が、すぐに思い浮かぶ人は、日本語を、かなり理屈っぽく理解している人かもしれません。
手元にあった広辞苑の第六版(最新版の一つ前の版)で、叱るを引くと、次のように出ていました。
しかる(叱る・呵る)
(目下の者に対して)声をあらだてて欠点をとがめる。とがめ戒める。
(引用終わり)
本来あまり良い意味の単語ではなかったようです。ニュアンスと言うか語感が変化しつつある単語なのかもしれません。
ともあれポイントになるのは「目下の者に対して」という部分。
子ども(小学生)向けの辞書で、この部分をカットしたのは、ある種の教育的配慮でしょうか。
大人同士で、女性が年齢の近い男性に対して注意する場合、「叱る」を使いづらいのは、叱るに「目下の者に対して」という意味が含まれているからでしょう。
(女性は感情的という意味ではなくて)
個人的な印象ですが、師がつく職業は「大人が大人を叱っても良い職業」という気がします。教師だけでなく、医師とか看護師とか薬剤師など。一方、弁護士や公認会計士、建築士など、士がつく職業は、本来、上から目線で相手を叱る職業ではないと思います。しかし理学療法士とか臨床心理士とか、士が付くもののイメージ的には師に近い職業も有ります。
そんなわけで
建前としては
「叱るは、相手のことを思って怒ること」
本音(辞書的な定義)としては
「叱るは、目下の者に怒ること」
辞書的な定義は、文章を書く時には参考になるかもしれません。
漢字に関する「おまけ」
呵る(しかる)、呵う(わらう)