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医療用の保湿剤、ヒルドイドが美容用に乱用されているという話題について。
普段アミロイド苔癬の治療にヒルドイド(のジェネリック医薬品)を常用している私としては、非常に困った事態だなと思いつつ、特別な保湿剤として広まってしまった理由も分るような気がします。(以下、個人的な経験と皮膚科医から聞いた話を元に書いています。根拠を確認していない話も含まれています)
私自身がヒルドイドを始めて使った時(皮膚科医から処方された時)は衝撃的でした。医師からヒルドイドを塗った後、台所で使うラップ(ポリエチレンラップ)を巻いておくように指示されていたので(密封療法)、一晩中、皮膚がベタベタになるほど強力に保湿されました。今振り返ると、これはヒルドイドの効果と言うよりもラップで水分が閉じ込められているからなのですが、体感的には、異次元の強力な保湿剤という印象が残っています。
どれだけエビデンス(科学的な根拠)があるのかは不明ですが、アミロイド苔癬やアトピー性皮膚炎の治療では、以前から使われていたワセリンや尿素よりもヒルドイドのほうが効果的という認識を、多くの医師、薬剤師、患者自身が共有しているようです。
また化粧品は、あまり皮膚の奥のほうまで浸透しては認可されないはずですが、ヒルドイドの場合は医薬品なので、筋肉の血行を良くしたり、汗をかく機能を向上させたりと言った効果があると言われています。こうした効果のため、特別な保湿剤と思う人がいても不思議ではありません。健康な皮膚の人には強すぎるような気もしますが、強すぎるぐらいが丁度良いと思う人もいるでしょう。
今回のヒルドイド問題、保険適用の制限とか、ネット記事の強制削除、グーグル八分のような強権策の是非は、ここではコメントしません。(色々な人が適切な議論をしてくれるものと信じています)
しかしヒルドイドと言う名前は変えてしまったほうが良いと個人的には思います。
理由は単純で名前が覚えにくいと口コミでは広がりにくいと思うので。
今、私がヒルドイドと一緒に処方されているステロイドは、アンテベートという軟膏のジェネリックですが、処方箋には 「ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル」と書く医師もいます。処方箋にベタメタゾン何とかかんとかと書いてあって、薬局で、この薬をもらった場合、アンテベートと言う商品名を知らなければ、この薬が口コミで広がる可能性は、ほとんど無いと思います。もっとも、ここまで分りにくいと処方ミスが起きても患者のほうでは気付かないという問題も起こりそうですが。
同様に、ヒルドイドもジェネリック医薬品と同じ「ヘパリン類似物質油性クリーム」に統一してしまえば、不適切な口コミは広がりづらいと思います。(ジェネリックと同じ名前だと、先発薬だけがブランド品のように口コミで広がる可能性も減ると思います)製薬会社としては長年育ててきたブランドを手放してジェネリックと同じ扱いになってしまうのは不愉快でしょうが、一度変なイメージがついてしまうと簡単には修整出来ません(ステロイドが一番良い例でしょうか)。
医学、医療の世界では精神分裂病とか痴呆症などの用語をどんどん変更してきました。変なイメージのついてしまった薬の名前を変えていくことも、一つの方法のように思います。
(ヒルドイドソフト軟膏のソフト軟膏という名前も今では古い呼び方なので、一般的な油性クリームにしたほうが紛らわしくないと思います)