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手話を第一言語として、学ぶ、考える、日本で生活するのは、どういうことなのか。
手話と「ろう教育」をめぐる、歴史的な経緯や最近の動向、課題や葛藤などを描いています。著者は、明晴学園の初代校長(TBSの元報道記者)。明晴学園は手話による教育を行っている私立の「ろう学校」。この本は、明晴学園で使用している日本手話を支持する立場で書かれています。
手話が、ある程度注目されていることもあって、「ろう」とか「聴覚障害」の世界は単純ではないということが、身近に当事者の人がいなくても何となく伝わってくるようになりました。NHKの福祉番組を見ていると、聴覚障害のある人でも、手話を使う人、読唇術のような口話中心の人、人工内耳を付けている人と多様です。また医師として活躍したり、一流大学で学ぶ人がいる一方で、日本語の習得に苦しむ人も登場します。
そんな多様な世界の中で、日本手話を第一言語とした学校で学ぶ生徒、手話で教える先生たちの喜びや葛藤を描いています。(それ以外の環境で学ぶ、生活する人のほうが多数派です)
これ以上細かい内容に言及するのは素人には難しい部分も多いので、以下は、個人的な感想です。
著者の主張が正しいかは別として、著者の気持ちは良く分ると思いながら読みました。普通の日本語を使っている多数派の日本人にとっても気持ちを伝えることは難しい。気持ちが伝わらなかったり、気持ちを否定されるのが怖い。だから日本語は実用的な情報のやりとりだけにしたいと思うときもある。でも気持ちが伝わった時は、とてもうれしい。本当は表情とかも含めて気持ちを表現したい。こんな風に考えると、日本手話、あるいは明晴学園が大切にしている価値観は、普通の音声による日本語を使っている人にも大切だと思えます。