社会への出かた 就職・学び・自分さがし (白井利明)
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若者がスムーズに社会に出るためには、何が必要かを論じた本。
著者の専門は青年心理学。この本を読んだ印象では純粋な心理学と言うよりは社会心理学や社会学に近い研究を行っているようです。
著者は「若者が悪い論」に対して、企業の変化が主な原因であるとデータを基に反論しています。結論から言うと企業側が正社員を減らした上で、欺瞞的な説明を行ってきたというもの。
コミュニケーション能力重視と言うのも最近の企業側の事情を反映しているだけで、本当に大切なものは別の部分にあるというのが著者の考え。
こういう内容だと思うのですが、アンケート結果の解釈とか、関係者へのインタビューとか、著者独特の少しくせのある文章で、読んでいて少し疲れました。
(平気な人は平気でしょうが、読む人を選ぶタイプの本かもしれません)
著者の考えでは、若者が社会に出るのを支援するのに大切なのは「社会への信頼感」を育てること。家族や学校での友達は信頼しても、それ以外の大人たちへの信頼が無いまま就職活動を迎え、就職活動に失敗した時や社会人経験の浅い時期に、社会に対する不信感を抱くことが問題だとしています。
青年も親も学校も目先の損得だけにとらわれるのではなくて、一時的に失敗しても立ち直っていけるような、若者と社会の相互理解、信頼関係を築いて行くべきという考えです。(そのためには労働組合のような組織も重要)
あまり景気の悪い時に読むとイライラするかもしれませんが、比較的景気の良い時に、ゆっくり読んで見ると色々なヒントに気づける本かもしれません。