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東大は人生の幸福を約束する場所ではなく、東大入学は、本格的な競争社会の入り口に過ぎない。東大生の多くは「高性能マシンが激走するサーキット(きわめて能力の高い人同士の熾烈な競争)」の中で生きていくことになる。
東京大学の場合、2年生前半までの成績で進学できる専攻が決まるため、希望の進路に進めない人や留年する学生も少なくない。象徴的な例として、他の大学なら余裕で獣医学部に合格できる学生が、東大では獣医学を専攻できないケースを紹介しています。(東大の獣医学課程は定員が少ないため)
また多くの卒業生は東大卒業後も激しい競争社会で生きていくことになります。
中央省庁の官僚になったり、博士号をめざして大学院に進学したり、銀行に就職したり。激しい競争の中で挫折を味わう人も少なくありません。人によっては心身の健康を害して自殺などの取り返しのつかない結果になる人も。
もちろん、そうした競争から降りることは可能ですが、競争から降りると、マイノリティとしての人生を強いられることになります。(東大卒業者の中で少数派であり、かつ東大出身者がいない職場でも少数派になります)
少数派になると、希少価値を認められて優遇されるよりも、つらい思いをすることが多いのは、東大の問題と言うよりも日本社会の問題かもしれませんが。
(地方公務員として就職したり、売れない漫画家になったり、警備員になったりしたケースが紹介されています)
この本で描かれている東京大学は、教育機関と言うよりも、大手芸能事務所や宝塚歌劇団のような存在です。それでも東京大学を選びますかと問いかけるような内容。
著者は東大農学部に進学後、大学院の博士課程にまで進んだものの、研究に行き詰まり挫折。同じく挫折を経験した東大出身者から貴重な話を引き出しています。
著者がゴーストライターをしていた時のくせなのでしょうか、あまり必然性のなさそうなエピソードが所々に挿入されていて、印象を悪くする人もいるかもしれません。
本文中には、東京大学の農学部獣医学課程を獣医学部と書いている箇所も。
(出版社に余裕があれば校正係の人がチェックするのでしょうが)
このように、真面目で能力もあるのに、些細なミスをあげつらわれ、傷ついてきた人たちの物語でもあります。
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