毒と薬の科学 [ 佐竹元吉 ]
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文系人間にとっては非常に敷居の高い分野が薬の話(薬学、薬理学)
正攻法で解説すれば、どうやっても難しくなってしまう分野ですが、歴史的なエピソードと薬の材料(様々な植物や動物など)に焦点を当てたトピックス形式で、かなり読みやすくなっています。
伝統医学→天然物化学(植物、動物、鉱物の毒と薬)→化学合成の毒と薬(狭い意味での薬学)→薬害、薬物の乱用という流れの中で「毒と薬」に親しんで生きます。
薬と毒の「科学」に関しては、断片的に簡単に触れられているだけとも言えそうですが。
本文は130ページほどなので二日ぐらいあれば読めそうです。
(この本の図表にも所どころに、有機化学で使う亀の甲が載っていますが、大部分の読者は、薬学って難しそうと思いつつ、スルーするしかなさそうです)
「毒と薬の科学」というタイトルの通り、本書の主役は毒。しかし、この本で取り上げられている毒の多くは「毒にも薬にもなる」ものです。
最初は植物や動物から毒として発見されて、研究、開発を経て、現在では薬の材料として使われている多くの物質。
古代から毒があることが知られており、毒を抜いて漢方薬に使われているトリカブト
薬のつもりで使っていたら多くの被害をもたらしたもの
(古代のヒ素や水銀、20世紀に多発した薬害)
毒と薬は古代から現代に至るまで、表裏一体、コインの裏表のような存在。
毒になるか、薬になるかは、さじ加減次第のものも少なくないと、実感できました。
断片的ですが印象的なエピソードが色々と紹介されているので、いくつかメモしておきます。
毒キノコの成分から薬を作る研究は何十年も続いているが成功していないこと
大きな薬害を起こしたサリドマイドは難病の治療薬として再び承認されたこと。
日本における漢方薬復権のきっかけとなった薬害事件(スモン事件)