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居場所と援助関係

今回の記事は、ブログの普段の読者の人向けと言うよりは、わたしがリアルで交流があって、居場所づくりに興味のある方向けに書いたものです。そのため分かりづらい部分もあるかもしれません。

 

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援助関係論入門 [ 稲沢 公一 ]


居場所と援助関係
昨年、このブログで紹介した援助関係論入門と言う本では、主に援助対象(援助を受ける人が困っていること)と援助関係(援助をする人と援助を受ける人の関係)に焦点を絞って解説しています。私は、居場所づくりに興味をもっているので、居場所づくりと援助関係について考えてみたいと思います。

 

福祉の出発点は「困っていること」
福祉と言う枠組みで援助とか支援を考える時に、出発点になるのは、「困っていること」。居場所づくりの場合でも、何に困っている人を支援したいのかを考えることが出発点になります。


援助関係論入門では、困っていること(問題、援助対象)を4つの側面に分けて考察しています。

 

個人的・客観的問題(個人的側面)
身体的、知的、精神的な機能や能力の問題
色々な病気、心身の障害


環境的・客観的問題(環境的側面)
自然環境、住居、収入と資産、福祉制度など
居場所との関係では、住居の快適さだけでなく、
パソコンやテレビ、テレビゲーム、ボードゲーム、漫画、
カラオケ、卓球などのスポーツ関連の用具や設備も、このカテゴリーと関連がありそう。

 

個人的・主観的問題(物語的側面)
本人のとらえ方や受け取り方に関わる部分
客観的には住む家はある、学校には所属している、または仕事があるのに、主観的には居場所がないように感じること。


環境的・主観的問題(文化的側面)
常識や社会通念、偏見など、多くの人が抱いている考えで、特定の人々を困らせる(苦しめる)もの

 

このように整理すると、居場所づくりの際に考えるべき「困っていること」には、単なる物理的環境の問題だけでなく、主観的な環境も含まれます。一方、個人的な側面である病気や障害、文化的な側面である偏見などは、居場所づくりの際に、直接的に取り組む対象には必ずしも含まれません。しかし、病気や障害を抱えた人、人々の偏見にさらされるマイノリティーの人たちは、居場所を得るためのハードルも高くなるので、そうした人たちにも利用しやすい居場所を作っていくことが課題になるでしょう。

 

 

援助関係論入門という本では、本題である援助関係についても、次の4つに分類して考察しています。

 

専門職的関係(医療モデル)
医者と患者の関係が代表例
援助する人が上で、主導権を握る関係になりやすい

 

ポスト専門職的関係(福祉モデル)
福祉職のケアマネージャーやソーシャルワーカーと、援助を受ける人との関係が典型例。対等な立場で利用可能な選択肢を考えるパートナーシップが理想。
援助する人と援助される人は対等だが、予算の制約という問題に悩まされることもある。

 

アンチ専門職的関係(ナラティブモデル)
無知なのは援助者の方で、クライエント(ここでは援助を受ける人)こそが専門家という考え方。
クライエントが語る物語(ナラティブ)を重視する。
援助関係としては、あまり一般的ではないが、個人的・主観的問題(物語的側面)を最も重視する立場である。

 

プレ専門職的関係(友人関係)
素朴な友人関係、及び、友人関係を発展させたもの。
困っていること(問題)の存在を前提とせずに生じる関係。
その一方で困っている時には親身になって相談に乗ってくれるような関係。


居場所づくりの場合、専門職的関係(医療モデル)は外部の専門家に任せるとしても、残りの3つの関係を作っていくことがテーマになります。特にアンチ専門職的関係(ナラティブモデル)は、一見役に立たないようにも見えますが、主観的な「居場所のなさ」に対する援助として重要でしょう。こうした関係を大切にしていく、集団の風土を作っていくことも、居場所づくりの一部になりそうです。

 

関係性を作っていくときに大切なのが対話。対話によって、よりよい関係性を目指していくのが望ましい在り方です。

 

居場所づくりと言うと漠然として捉えどころがないような気もします。しかし援助対象(困っていること)と援助関係に分けて考えることで、課題が明確になるのではないでしょうか。