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日本財団がスポーンサーになって、東京大学の中邑賢龍教授が中心になって行われている「異才発掘プロジェクトROCKET」。何らかの才能に恵まれている一方で、一般的な学校教育に適応しにくい子どもに、居場所を提供し、英才教育を施す試みです。(社会実験に近いものかもしれません)そんな異才発掘プロジェクトを紹介した岩波新書。(2017年出版)
ROCKETでは、どんな子どもたちが集まって、体験学習として、どんなことを学んでいるのか。
中邑教授の教育観や熱い思い。
著者の伊藤史織さん自身の子育ての経験や、ボクシング元世界チャンピオン輪島功一さんのインタビューなども掲載されています。
中邑教授自身の執筆ではなくて、ライターさんによるルポのような形式をとっている点で、岩波新書も変わったなと思います。アインシュタインの『物理学はいかに創られたか(上・下)』や、朝永振一郎の『物理学とは何だろうか(上・下)』と同じシリーズとは思えません。他の出版社の読みやすい新書と変わらなくなってしまったなと思います。
以下は、個人的な意見です。
異才発掘プロジェクトを紹介したテレビ番組を見ていても、この本を読んでも気になるのは、「中邑教授は、あまりコミュ力(コミュニケーション能力)が、高いタイプではないかも」という点。それでも東大教授に上り詰めた凄い先生だけど、この先生についていくのは、普通の先生以上に大変そう。(先生についていけないという子どもと、中邑先生との会話が噛み合っていません)
個人的には、人間関係に悩む子どもには、中邑教授とは正反対のコミュニケーションの達人みたいな人が必要な気もします。コミュニケーション能力があって、人間関係での摩擦を軽減してくれる大人に恵まれれば、多くの場合、新し道が開けてくると思います。英才教育とか専門教育は、その後でも充分では?そう考えると英才教育的な側面の強い異才発掘プロジェクトにこだわるよりも普通のフリースクールなどのほうが、多くの子どもにとって、有益ではないかと思います。
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異才発掘プロジェクトと声優事務所の仕事は、意外なほど似ています。(声優さんがスカイダイビングをやった話なんかも出てきます)。両者の類似点にに胡散臭さを感じるか、普遍的な価値を見出せるか。後者の人が多くなればいいのですが。