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「免疫力」があなたを殺す [ 村上文崇 (むらかみ ふみたか)]
極論っぽいタイトル、名前を聞いたこともない著者と出版社、公的な資格ではない漢方医と言う肩書きと、警戒心をかきたてる要素がそろっている1冊ですが、この本を読んで見ようと思ったのは個人的な体験が関わっています。
私自身、以前は毎年何回も風邪をひいていました。その時は素朴に免疫力が弱いから毎年風邪をひくのだと思っていたのですが、病院で気管支喘息と言う診断をうけ喘息の治療をすると、滅多に風邪をひかなくなったのです。つまり私が毎年風邪をひくと思っていたのは、普段から気管支がアレルギーによる炎症(気管支炎)をおこしているのが原因だったのです。そんなわけで免疫力礼賛本には不信感を抱き、免疫の負の部分を易しく解説した本を読みたかった時にタイミングよく、この本を見つけました。
実際に読んで見るとと、ちょっと心配していた独自理論的な内容ではなく免疫に関して、医学の予備知識がない人でも偏った理解にならないように易しく説明した内容でした。
免疫を軍隊や自衛隊に例え、免疫とは自国の領土内で行う戦争のようなものと考えます。(自国の領土内で戦争をすれば当然色々な被害が出ます)
免疫に興味を持った普通の人(私も、その中の一人)は、専門的に医学を学んだ人と異なり、炎症について理解することなく免疫の華々しい成果のみを繰り返し刷り込まれてしまいがちです。その結果、医学の常識とはかけ離れた免疫万能論者が出来上がったりします。そのため、この本では風邪やインフルエンザなどの感染症、花粉症などのアレルギー性疾患、リウマチなどの自己免疫疾患と言った身近な病気を通して炎症に関する、おおまかなイメージをつかんでいきます。そして現代人が炎症≒免疫反応をおさえる薬を有効に活用していることを説明していきます。
アトピーには深入りしていませんが、ステロイドの使用は肯定しています。
(漢方、中医学の立場の人たちがステロイドを肯定することで脱ステロイドの外堀を埋めていくような感じは、実際に漢方医を受診した場合にも実感しました)
最後に漢方の陰陽の理論を使って、免疫は、ただ強ければ良い訳ではなく、バランスが大切と説いています。
難しい話は苦手だけど免疫に関して常識的な知識を得たい人には役立つ内容だと思います。