好きなことを知っている人は、しあわせ

好きなことを知れば幸せになれる。好きなことが分からないと幸せになるのは難しい    

医者の稼ぎ方 フリーランス女医は見た  筒井冨美


 

医者の稼ぎ方 フリーランス女医は見た [ 筒井冨美 ]

 

数日前に、このブログで紹介した同じ著者の本は、フリーランスの編集者との相性が良すぎたのか非常に個性的な怪作になっています。一方2作目の本書は、編集者も出版社も変わって比較的常識的な構成になっています。タイトルや前書きと中身は、ちゃんと対応していますし、後書きも真面目な内容。週刊誌の引用は最低限にしてできるだけ公的な統計などを使うようになっています。固有名詞を出すか、伏せるかの判断にも気を使っているようで、他の本では裁判になっても、この本では裁判沙汰にはしないという編集者のバランス感覚を感じます。 1冊目の本を見て酷い出来だけれど、この著者は売れる本を書けそうと見抜くのが 編集者の嗅覚のようなものかもしれません。(ドクターXの制作協力と言う肩書きも本を売るのには役立ちそう)

 

この本のテーマは、タイトルどおり、医師免許を持っている人間が、いかに稼ぐかということ。しかし外資系企業やマスコミ、一部の内科医のようなコミュニケーション能力に頼った稼ぎ方ではなくて、医師免許を持っているなら医者にしか出来ない分野で知識を深め、技術を磨くのが理想というのが著者の考え。具体的には医師の中でも出来る人が極めて限られている高度な麻酔や難しい手術、帝王切開を含む産科医療、不妊治療など。 そうした分野で高度な技術を身に付け、大学病院の教授になれなくても引く手あまたの医師になってバリバリ稼ぐのが著者にとっての理想の稼ぎ方。

 

そうした立場から大学病院や医療行政の問題点も指摘しています。

また産婦人科を例に、医療に競争原理を導入する効用を訴えています。

 

著者のモットーは「有能は厚遇、低能は冷遇、無能は淘汰」

淘汰ではなくて内科に押し付けてるような気もしますが。

 

医者の稼ぎ方 フリーランス女医は見た [ 筒井冨美 ]

今日も私は、老人ホームの看護師です(マンガ)


 

今日も私は、老人ホームの看護師です(1) おとぼけナースと、かわいい仲間たち [ 鈴橋加織 ]


 

今日も私は、老人ホームの看護師です(2) おとぼけナースと、かわいい仲間たち [ 鈴橋加織 ]

 

タイトルどおり、特別養護老人ホームを舞台にしたエッセイ風マンガです。(設定はフィクション)入居者は介護度が3以上、認知症と何らかの体の障害がある高齢者。(本格的な治療やリハビリが必要な人には対応してないとのこと)主人公の看護師は昼間だけ施設に勤務しています。(夜間は看護師が勤務しない施設)

 

日本人の知らない日本語と言う日本語学校を舞台にしたエッセイマンガがありますが、舞台を老人ホーム、主人公を日本語教師から看護師に変えた感じと言えば雰囲気が伝わるかもしれません。

 

悪気がなくても滑稽だったり迷惑な行動をとってしまう高齢者。それに対してプロとして正しいと思われる対応をとる看護師や施設スタッフ、医療関係者。しかし滑稽なのは施設入居者だけでなく、実の親の変化に戸惑い、適切な対処が出来ない子ども(時には配偶者や孫)も同じ。親に対する独りよがりの愛情から、モンスターペアレントならぬモンスターチルドレン(実際にはモンスター中年)のように振舞ってしまう人も。そうならないためには、最低限の知識と医療や福祉の専門家とのコミュニケーションが必要になりそう。

 

老人ホームでの看護師さんの役割も色々。


入浴などの介護をしたり、入居者の外出(行事として行われている集団での外出)
の付き添いをしたりとヘルパーさんに近いもの。


採血。施設に往診に来る医師の補助。緊急時の救急車の手配など、医療に直接関わるもの。


3つ目が老人ホーム特有だと思うのですが、認知症の入居者と医師や救急隊員、時には家族とのコミュニケーションを補佐すること。自分の症状が適切に伝えられない入居者が適切な処置や治療を受けられるように、看護師さんが通訳のような役割を果たしています(日本人の知らない日本語でも、日本語教師が外国人患者と日本人医師の間の通訳のような役割を果たすシーンがあったと思います)

 

プロの漫画家だと、看護師を不自然に美化したり看護師の恋愛事情とか余計な設定をいれてしまいそうですが、そうした部分が全くない点も好印象。
大人になった、ちびまる子ちゃんみたいな主人公が、認知症の入居者に戸惑ったり疲れたりしながらも淡々と日常業務をこなしていきます。

 

良い本を見つけたと素直に思える作品でした。(マンガですが)

 

今日も私は、老人ホームの看護師です(1) おとぼけナースと、かわいい仲間たち [ 鈴橋加織 ]

今日も私は、老人ホームの看護師です(2) おとぼけナースと、かわいい仲間たち [ 鈴橋加織 ]

 

大人もハマる週末面白実験(ブルーバックス)


 

大人もハマる週末面白実験 自宅でできる科学の感動体験 (ブルーバックス) [ 左巻健男 ]

(理科教員などによる分担執筆)

 

講談社ブルーバックスシリーズのロングセラー。
初出は2001年、読売新聞夕刊土曜版の連載。ブルーバックスになったのは2005年。

 

ホームセンターやインターネット通販で材料を入手すれば家庭でも出来る実験。
(子どもだけだと、火傷などの危険のある実験も含まれています)
小学生なら実験結果の不思議さに素直に驚きそう。
中学生なら、理屈を説明すれば理解できそうな実験。
(合計34本)

 

お酢で生卵の殻を溶かして、ゴムのようなゴム卵を作る。
簡単なカメラや電池、使い捨てカイロを自作する科学工作。
実際に食べられる手作りグミやカルメ焼き、太陽光で作るゆで卵
光や熱、静電気の不思議さを体感できる実験。
氷の不思議な性質

 

ちょっと異色なのは鶏のレバーからDNAを抽出する実験。無水エタノールを薬局で購入すれば、家庭にあるような道具と材料でDNAの抽出が可能とのこと(この方法では人間の細胞からDNAを抽出するのは不可能とのこと)

 

全体的に物理、化学に関する実験が中心で、生物、地学に関する内容は少数です。小学校の理科では、生物や地学は観察が中心で、実験できる項目は限られているのかもしれません。

 

写真やイラストは全部白黒なので、今時の小学生、中学生向きと言うよりも、小学校や塾の先生、科学実験の動画を配信するユーチューバー、子どもを理科好きに育てたい親御さん向きでしょうか。でんじろう先生のような派手さはないものの、理科(科学)に対する理解が深まる実験、科学工作が選ばれていると思います。

 

大人もハマる週末面白実験 自宅でできる科学の感動体験 (ブルーバックス) [ 左巻健男 ]

 

名医と迷医の見分け方 筒井冨美 宝島社

発売日: 2016年04月07日頃
著者: 筒井冨美
出版社: 宝島社
発行形態: 単行本
ページ数: 249p
ISBNコード: 9784800252630

 

悪ノリしすぎ、毒を吐きすぎの内容なのに、表紙とタイトルだけ普通っぽくしたものの、わずか1年半で絶版になってしまった本書。羊頭狗肉、表紙と中身を極端に乖離させるのは詐欺紛いの売り方と言われても止むを得ないのではと思います。(タイトルと本文が全く関係ないわけではありません)個人的には宝島社は要注意出版社のブラックリストに載せておきたいと思います。一番悪いのは出版社だと思いますが、著者自身もネットメディアで発表した署名記事でトラブルをおこしているようです。

 

 この内容で出版したいなら、せめてペンネームにすべきだったかも。医師が実名で執筆しているのに、学歴、経歴を隠していると、何かトラブルでもあったかもって詮索したくなります。(ほんとにトラブルがあったら実名では書かないと思いますが)


フリーランス女性麻酔科医による歯に衣着せぬ業界裏話を読みたい人にとっては、面白い本だと思います。

お金ってなんだろう? (長岡 慎介)


 

 

お金ってなんだろう? あなたと考えたいこれからの経済 (中学生の質問箱) [ 長岡 

慎介 ]

 

中学生を想定読者とした、ユニークな、見方によっては、癖の強い経済・金融入門。現在のアメリカ中心の金融システムを全て無条件に受け入れるのではなくて、「もっと多くの人が幸せになれる金融の仕組みはないか」と考える若い人たちが増えることを期待して書かれています。

 

お金を本来の用途、商品の売り買いにだけ使用している時には、お金が直接の原因になって世界中が大混乱するような事態は起こりません。しかし資本主義が浸透して、野菜や魚と言った実際の商品を扱う「いちば(市場)」だけでなく、商品取引所のような「しじょう(市場)」が整備されていきました。また、お金を貸し出す銀行や株式会社、先物取引とか債券の証券化と言った金融の仕組みも整備されていきました。こうした出来事は、基本的には世の中を便利にして多くの人に金銭的な利益をもたらしました。しかし一方で、バブル崩壊金融危機と言った世界中に大混乱をもたらすような出来事も起こっています。また資本主義を否定した共産主義国家が失敗したこともあり、現在でも人々の間には大きな格差があります。

 

一方、大学時代に農業経済を専攻し、現在はイスラーム経済が専門の著者、長岡慎介の関心事は、今の日本とは別の金融システムもありえるのではないかということ。その代表例として、イスラム経済、イスラム金融を研究しています。そのため、この本の3分の1ぐらいはイスラム経済、イスラム金融の話(それ以外の3分の2は、資本主義と金融の歴史から経済について考えています)

 

クルアーンコーラン)で利子を受け取ることを禁止しているイスラム教。そのためムスリムイスラム教徒)は独自の金融システムを発展させてきました。そうしたイスラム経済、イスラム金融に関して、この本は、おそらくもっとも易しい入門書にもなっています。

 

蛇足(個人的な感想)
バブル景気の時代、「かねに色はついていない」と言う表現があったと思います。稼いだ金額だけが問題で、稼ぎ方なんて関係ないという意味でしょうか。
昔は皮肉や嘲笑をこめて使われていた表現のような気がしますが、今では「かねに色はついていない」のは当たり前のようになってしまいました。本当に、それでいいのと疑問に思う大人が読んでも得るものがある本だと思います。中学生には少し難しいかもしれませんが。

 

お金ってなんだろう? あなたと考えたいこれからの経済 (中学生の質問箱) [ 長岡 慎介 ]

競争しない競争戦略 山田英夫


 

競争しない競争戦略 消耗戦から脱する3つの選択 [ 山田英夫 ]

 

大手企業と競争しない経営戦略を、具体的な企業の実例を紹介しながら解説しています。紹介されているのは中規模な企業が中心ですが、一部の分野で競争を回避している大企業の例も(フジフィルムのチェキ、コンビニATMセブン銀行や葬祭業に進出したイオンライフなど)

 

この本で大前提になってるのは、業界トップの大手企業は合理的な選択をするということ。そのため損をしてまで競争を仕掛けてくることはないと考えます。
また、今は稼いでいるのに一時的であっても儲けが減る選択をすることも少ないと考えています。一方、中小企業や個人が競争を仕掛けてくるのは回避できず、小規模な会社同士の競争に勝てない会社は生き残れないと言う立場です。

 

具体的な戦略としては、ニッチ戦略、不協和戦略、協調戦略をあげています。

 

ニッチ戦略で大切なのは、単に小さな市場を狙うのではなく、「大手企業にとって
儲かりそうにない状態」を維持すること。それほど儲からず、それほど成長しない状態を維持できずに、ぼろ儲けしたり、市場が大きく成長すれば、最初はニッチ市場でも、やがてライバル会社が参入してきます。

 

当初はニッチ市場だったものの、ライバルが参入してきた例としては、ダイソンのサイクロン掃除機や、ロボット掃除機ルンバ、ほけんの窓口など。

 

単に成功事例を紹介するのではなくて、なぜ大企業は競争を仕掛けてこないのかに、こだわって解説しています。

 

二つ目の不協和戦略は競争をしないというよりも、大企業が反撃しにくい方法で競争を仕掛けると言うほうが的確かもしれません。まともに反撃すると、競争に勝つことによる利益よりも既存の事業で被る損害のほうが大きくなる状況を作り出す高等戦術です。1000円カットのQBハウス、フィットネスクラブのカーブス、ライフネット生命ソニー損保など。不協和戦略の場合は、競争しないのは一時的なもので、状況の変化にともない激しい競争に突入することもありそうです。

 

協調戦略では、主に大企業が部分的にライバル企業と競争しない市場を作り出すビジネスモデルを解説。大企業が一部の部品をライバル企業に提供したり、ライバル企業の商品やサービスを扱う事例、ライバル企業同士で同じサービスを利用する事例が紹介されています。(GEやコスモ石油など)

 

直接的には言及されていませんがゲーム理論を背景とした経営理論という印象。

 

読みやすく色々な業界に応用できそうな内容です。

 

競争しない競争戦略 消耗戦から脱する3つの選択 [ 山田英夫 ]

 

乳酸菌、宇宙へ行く (ヘルシスト編集部 )


 

乳酸菌、宇宙へ行く [ ヘルシスト編集部 ]

(電子版もあります)

 


乳酸菌を初めとする腸内細菌に関する科学読み物。
ヘルシストは、株式会社ヤクルト本社が発行する健康情報誌。(編著者に、ヤクルトが入っていたほうが分かり易い気もしますが)

 

かつては感染症の原因になる病原性微生物の研究が中心。一方、最近では腸内フローラとか腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)と言われる腸内の環境そのものに対する関心が高まっています(腸内フローラとは腸内の微生物生態系、微生物群集を表す用語)

 

そして腸内フローラに影響を与えると期待されているのが乳酸菌。特にヤクルトは
発売当初から活きたまま腸に届く乳酸菌を使用してきた伝統があるので、特に効果的。こんなに乱暴ではないですが、大雑把に言うと、こんな感じの内容です。

 

とは言え乳酸菌に関する興味深い研究が色々と紹介されています。

 

乳酸菌、宇宙へ行くというタイトルは国際宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士が乳酸菌飲料を飲むことで、腸内細菌と免疫にどのような影響があるのかを調べる研究から。

 

腸内細菌の研究は糞便の中の細菌を分析したり、無菌状態のマウスに他のマウスの腸内細菌を移植したりと、非常に泥臭い研究を膨大な量、積み重ねて進歩してきたこと。

大腸にいる乳酸菌の多くは酸素に触れると死んでしまうため培養自体が大変なこと。

 

ヤクルト創業者である代田稔博士は胃酸などでは死なない乳酸菌の培養に成功して(乳酸菌 シロタ株)、ヤクルトとして商品化したこと。


ヤクルトを飲んで大腸に届いた乳酸菌 シロタ株も、ずっと大腸に住み着くことは出来ずに、1週間ほどで便とともに排出されてしまうこと。(ヤクルトは飲み続けないと一時的に変化した腸内細菌は元に戻ってしまう)

 

赤ちゃんは出産の時に母親の細菌を受け継ぎ、母乳で免疫関連の物質(IgA抗体)をもらうこと。

 

アトピーに関する項目では、便秘が皮膚病を悪化させるメカニズムに関する研究も。

 

他にも乳酸菌と免疫、脳、肥満や風邪などに関する研究が色々と紹介されています。

 

読む人の立場によって評価が分かれそうな内容ですが、読み易い文章で個人的には興味深く読めました。

 

乳酸菌、宇宙へ行く [ ヘルシスト編集部 ]