日本語練習帳 岩波新書 大野晋
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20年ほど前のベストセラー。現在でも入手可能なロングセラー。
「思う」と「考える」、「意味」と「意義」、助詞「は」と助詞「が」のように、単語、1語、1語にこだわるトレーニング。文章の正確な意味を理解すること、そして的確な単語を使って文章を書けるようになることが目標。
今読んでも参考になる内容が多いのですが、時間の流れを感じる内容も結構ありました。
夏目漱石や太宰治など戦前の文章が多く引用されています。こうした文章との距離は、20年間で、かなり広がっているように思います。
また当時は新聞が日本語の文章の基準となる役割を果たしていたと言えそうです。字数調整の関係で所々に変な部分があっても、もっとも標準的な文章だと、当時は考えられていた。現代の日本語は新聞と言う大きな拠り所を失いつつあるような気がします。
敬語も謙譲語の分類や説明が現代的な説明とは異なっています。
ら抜き言葉に関しては、本書も「理にかなったものであり定着していく」と言う立場です。
以下特に感心した内容を二つメモしておきます。(助詞「は」と「が」の違いは、第二章全部を使っているので、興味のある人は本文を見てください)
経済、哲学、文明と言った翻訳語(英語など欧米の言葉から翻訳して作った熟語)は漢字を見ても正確な意味は分からない。本当の意味を知りたかったら、元になった外国語の意味を確認すべき。
「意味」とは、個人的に舌で感じ分けるように微妙に込められている気持ち。
(いかにも日本語らしい、この理解は、生きる意味を考える時にも役に立つと思います)