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通信制高校のすべて 手島純 他


 

通信制高校のすべて 「いつでも、どこでも、だれでも」の学校/手島純/阿久澤麻理子【1000円以上送料無料】

 

今回は非常に長くなってしまったので、先に結論を書きます。通信制高校に少しでも興味ある人はお読みください。興味深いエピソード、示唆に富むエピソードが色々と書かれています。

 

通信制高校の現状や歴史、存在意義について解説した本です。
通信制高校で実際に教えていた先生や、教育社会学などの研究者が執筆。
全体的には中学生でも読めるような分かり易い表現で書かれていますが、一部に
学術的で少しレベルの高い議論も含まれています。

 

第一章では、読者の先入観を問う、こんな質問が出てきます。

 

中学校を卒業後、すぐに通信制高校に入学する人は毎年2万人程度です。
それでは、通信制高校を卒業する人は毎年何人ぐらいでしょう。

A 1万人、 B 2万人 C 3万人以上
(選択肢は、今勝手に作ったもので、本の中にはありません)

 

 

 

答えはC。3万人を軽く超えて5万人程度になるということです。
しかも20歳以上の高校生は激減していて、今では通信制高校に通う生徒も大多数は10代とのこと。つまり、中学卒業直後以外の時期に、3万人程度の少年少女が通信制高校に入学していることになります。この話を、あまり引っ張ってもしょうがないので、答を書くと、3万人の学生の多くは、全日制(いわゆる普通の高校)を辞めて通信制高校に入学した人たちです。いわゆる普通の高校に通うことが難しくなった人たちを受け入れるのが通信制高校の大きな役割の一つです。

 

この他にも通信制高校には、いくつかの役割があります。
一つは専門学校でなくては学ぶことの難しい内容をメインで学びたい場合。
この場合は、高校も卒業するという意味合いが強いので、通信制高校の問題というよりは専門学校や主に私立の通信制高校に設置されている専門的な技能を学ぶコースで何を身につけるかが問題になります。(イメージしやすい例をあげると、アニメとかゲーム制作、漫画家、声優など競争が激しく、人気も高いものの高校教育に組み込みづらい内容を学ぶケース。本人はともかく保護者の思惑としては、スムーズな進路変更も可能な学校を選びたい場合もあるでしょう)

 

もう一つ、この本で特に重要視している学生層は、高校以外での支援が特に必要とされている人たち。フリースクールや精神科クリニックの支援が必要な人、特別支援学校に通うほどではないけれど障害者枠での就職を意識したトレーニングを受けたいケース、長い間外国で暮らしていて日本語を新たに学ぶ必要のある人(外国人など)、少年院での矯正教育受けながら通信制高校の学生になる場合など。

 

通信制高校の多くは、専門学校などのサポート校や、フリースペースなどのサテライト施設と提携しているので、通信制高校を選ぶ時は、学校がどんな所と提携しているかも重要だと強調しています。実際には提携施設に通う学生も多く、提携施設の情報開示と質の確保が大きな課題になっているとのこと。(提携施設に関しては規制がゆるいので、問題のある施設が紛れ込む危険性もあり警戒が必要とのこと。)

 

もう一つ重要なのは公立の通信制高校と私立の通信制高校の違い。
公立の通信制高校は学費が非常に安く誰でも入学できる代わりに卒業が比較的むずかしいとのこと。(通信制でも高校の学習内容を、ちゃんと学習したい人向き)
一方私立では、学費は高くても、ほぼ100%卒業できる学校も多いとのこと。
(一般的な通信制高校のイメージに近いのかもしれません)
編著者の手島純が公立の通信制高校で教えていたこともあり、全体的に公立の通信制高校に、やや好意的な内容かもしれません。

 

また経済特区制度で誕生した株式会社立通信制高校は過当競争に陥り、経営的には、ほぼメリットが無くなってしまったとしています。

 

印象的なエピソードを列挙するだけでも、きりがないぐらい興味深い内容でした。

 

通信制高校のすべて 「いつでも、どこでも、だれでも」の学校/手島純/阿久澤麻理子【1000円以上送料無料】

 

 

マンガ生物学に強くなる (講談社 ブルーバックス)


 

マンガ生物学に強くなる 細胞、DNAから遺伝子工学まで (ブルーバックス) [ 堂嶋大輔 渡辺雄一郎 ]

 

講談社ブルーバックスシリーズの1冊ですが、内容的には高校生物を扱った学習漫画です。(一部に高校生物のレベルを超える発展的な内容、新しい研究成果も紹介されています)

 

細胞、遺伝子、生殖と発生、遺伝、バイオテクノロジーと高校生物の中でも比較的難しく、現代の生命科学の基礎となる分野を中心に扱っています。
こうした分野が簡潔にまとめてあり、比較的短時間で高校生物の予習や復習をする場合には悪くない内容だと思います。(学習に重点をおいて学習漫画を活用する人にとっては悪くない内容)

 

漫画のストーリーとしては、ある高校の生物部、部員4人が顧問の先生と一緒に国際生物学オリンピックを目指すというもの。この設定はいいとしても、この学校の生物部は実験をしたり生き物を観察したりするのではなく生物学勉強部になっています。個人的には、この点が残念な気がします。(設定上は色々な動物を飼っていますが、勉強部分とはあまり関係ありません)せっかく生物部を舞台にするなら、もっと生物部って面白そうと思えるエピソードが欲しいところ。普段の生物の授業とは違って自分で実験を計画したり、生き物を観察しに山や海にでかけたり。そこで色々発見したりハプニングに出会ったほうが、漫画にするメリットを活かせたのではないかと思います。

 

テーマが漫画向きじゃないと割り切って読むのなら悪くない内容。

 

 

マンガ生物学に強くなる 細胞、DNAから遺伝子工学まで (ブルーバックス) [ 堂嶋大輔 ]

新しい科学の教科書(生物編)左巻健夫他


 

新しい科学の教科書(生物編) 現代人のための中学理科 [ 検定外中学校理科教科書をつくる会 左巻健夫 ]

 

ゆとり教育によって教科書の内容が大幅に削減されていた頃、教科書検定をうけない内容豊富な教科書(教科書風読み物)として注目を集めた、検定外理科教科書シリーズの1冊。図書館には学年別に編集された学年版が置いてあることが多いのですが、こちらは生物分野だけを分冊にしたもの。

 

中学理科の生物がテーマなので、小学校の理科(生物)と高校の生物(生物学)との橋渡しのような内容になっています。

 

目次を見ると、前半は高校以上の生物学の教科書よりも、小学校の理科を思い出すようなテーマになっています。
第1章 植物のくらしとからだのしくみ
第2章 植物のなかまと歴史
第3章 動物のくらしとからだのしくみ
第4章 動物のなかまと歴史

 

第5章の細胞・発生・遺伝は、タンパク質やDNAと言う用語も登場し、高校生物のイントロダクションのような内容です。ただし遺伝子やタンパク質と言った「生物学」に関する記述は、それほど多くなく、第6章以降では、生物の進化、宇宙と地球、生物の歴史、環境問題と言った内容を扱っています。

 

アフリカのライオンとヌーなど、様々な生物が多様な方法で環境に適応していることを繰り返し紹介した後で、後半、生物の進化を扱っているので、「進化に目的はない」という説明が特に印象的でした。


中学生向けの参考書は、あまり図書館に置いてないので、中学理科を復習してみたくなった大人にとっては便利だと思います。

 

個人的な感想としては中学校の生物は様々な「生き物」が登場し範囲が非常に広いので、詳しく学ぼうとすると大変そう。ゆとり教育の本来の目的のように、興味を持ったテーマを選んで学習したほうが楽しそうと、この本の目的とは反対のことを思ったりしました。

 

 

新しい科学の教科書(生物編) 現代人のための中学理科 [ 検定外中学校理科教科書をつくる会 左巻健夫 ]

誰からも好かれる NHKの話し方(NHK関連の本)


 

誰からも好かれる NHKの話し方 [ 一般財団法人NHK放送研修センター・日本語センター ]

 

前回紹介した、ことばおじさん梅津アナウンサーの本が正しい日本語について学ぶ本なのに対して、こちらはコミュニケーションのコツを説明するタイプの本です。

 

どちらかと言うと日本語そのものより人間関係、テレビ局の職種で言うとアナウンサーよりも報道記者に関わりの深い内容が多くなっています。

 

各章は全部「NHKのアナウンサーは」または「NHKのアナウンサーの」で始まっていますが、初対面の人にインタビューするコツのように、記者の仕事としても大切な内容を詳しく説明しています。

 

この本をつらぬいているのは「人に対する温かい好奇心を持つ」と言うこと。
山田敦子アナウンサーがアナウンサー採用面接の時に見ていたポイントとのこと)
まずは温かい好奇心を基本にして、観察力、雑談力、聞く力を磨くこと。その上で、話の要点をまとめたり、聞き取りやすい話し方をするといった表現力が生きてくるという立場で書かれています。

 

個人的な感想ですが、この本の内容はアナウンサーになりたいという人よりも、
人間関係を改善したい人向きではないかと思います。

職場や学校で皆が目先の成果ばかり追い求め人間関係がギクシャクしている時。
忙しくて自分を見失っているメンバーがいる時。そんな時に、温かい好奇心を持って人の話を聞く余裕のある人がいると、集団の風通しがとても良くなり関係者が活き活きしてきます。

 

出来る人、出来ない人がいると思いますが、出来る人にとっては「誰からも好かれる 人との接し方」の具体的な内容が書かれています。

 

誰からも好かれる NHKの話し方 [ 一般財団法人NHK放送研修センター・日本語センター ]

 

 

 

梅津正樹 知らずに使っている実は非常識な日本語


 

知らずに使っている実は非常識な日本語 [ 梅津正樹 ]

 

NHKことばおじさん梅津正樹アナウンサーが、間違いやすい日本語について解説したもの。

 

数日前にブログに書いた「NHK 気になることば」が、日本語についてじっくり考えてみる本なのに対して、こちらは、就職活動や職業上の必要に迫られて、正しい日本語を使うことが特に必要な人向き。一つ、一つの例文を、○、△、×で評価していますが、入社試験などを意識してか、少し厳しく×を付けていると思います。

 

若い読者を想定してか、理屈っぽく考えると間違いのような気がするものの実際には正しい表現が少なくないことを、いくつかの例文で示しています。

例 
「部長、ごめんさない」は命令形だから失礼と考えるのではなく問題ない表現

 

その場の状況や人間関係に応じて正しい日本語を選ぶこと。目上の人に使っても良い表現か、どうかにも注意を促しています。

「ってゆーか」なんて表現はダメ。(絶対に使うなと言う意味ではなくて、職場では不可と言う意味)

 

個人的に特に難しいと感じたのは最後の章、漢字の変換に関する部分。発音が同じだと、間違いでも意味が通じるので、勘違いしていないかチェックしておいたほうが良さそうです。

 

2、3時間で読める分量なので、就職活動を控えた大学3年生が通学の電車の中で読むのに良さそうです。

知らずに使っている実は非常識な日本語 [ 梅津正樹 ]

 

 

今日から「菌トレ」! オソロしくてオモロい、菌とのくらし 都あきこ


 

今日から「菌トレ」! オソロしくてオモロい、菌とのくらし [ 都あきこ ]

 

ヨガをきっかけに生命科学に興味を持ち、40歳で神戸大学理学部に入学したエッセー漫画家の都あきこ。大学で受けた基礎微生物学の講義に感動して、菌と人間と言う視点から生活を見直そうと思い立ったとのことです(監修の佐伯圭一神戸大学准教授は、その講義の担当講師)

 

キッチン、食品、お風呂、トイレと、菌(細菌とカビなどの微生物、ウイルスも含む)と人間との関わりを見直していくエッセー漫画。(簡単に言うと、ちゃんと掃除したり、食品の衛生管理にこだわったりするわけですが)

 

もちろん悪い菌(悪玉菌)を遠ざけるだけでなくヨーグルトなどの発酵食品をとったり、子どもを自然の中で遊ばせたりと善い菌(善玉菌)との共存を目指すことも忘れません。

 

菌(微生物)自体に関する解説は、ごく簡単なものですが、抗生物質が効く細菌、抗インフルエンザ薬を使うインフルエンザウイルス、治療薬の開発が難しい水虫と、所どころに役に立つ豆知識も。

 

ストイックで、やや極端な漫画の内容を真に受けるか、話半分に聞いておくのかは人それぞれだと思いますが、微生物が少し身近になるエッセー漫画。

 

今日から「菌トレ」! オソロしくてオモロい、菌とのくらし [ 都あきこ ]

 

 

NHK 気になることば(ことばおじさんの番組を書籍化したもの)


 

「サバを読む」の「サバ」の正体 NHK気になることば (新潮文庫) [ NHKアナウンス室 ]

(実際に読んだのは、東京書籍の単行本です)

 

テレビで見かける日本語のプロフェッショナルとしては、予備校講師の林先生や学者一家の3代目、金田一秀穂先生、「声に出して読みたい日本語」の齋藤孝先生などがいますが、数年前までNHKに出演していた、「ことばおじさん」梅津 正樹アナウンサーを覚えている人も多いのではないでしょうか。この本は梅津アナが出演していた「ことばおじさんの気になることば」を書籍化したものです。

 

まず、まえがきの冒頭が秀逸です。(以下引用)
「最近の若者のことばは、どうなっているのだと、嘆いていらっしゃる皆さんにこの本を読んでいただくと、簡単には若者を批判できなくなるかもしれません。反対に、どうして大人は、私たちのことばに文句を言うのだと、不満をお持ちの若い方にこの本を読んでいただくと、そうだったのかと納得していただけるのでないかと思います。」(引用終わり)

 

単に辞書に載ってる正しい表現を押し付けるのではなく、長い年月を経て来た日本語の変化、及び地方や年齢による日本語の多様性の両方を踏まえて日本語について考えるという立場です。そして最終的には多数の人が使っている表現や解釈には、なるべく逆らわないという民主主義的な態度。


理想ではあるものの、実際に行うのは非常に労力がかかり難しいことだと思います。そんなわけで、ワンランク上の日本語雑学を読みたい人にはお勧めの1冊。

 

以下特に印象的だった項目を2つだけ紹介します。


とっつきにくいの意味で私も何回か使っていた「敷居が高い」
こんなのは誤用だと切り捨ててしまえば楽なのでしょうが、
本来の意味で使っている人よりも、私のような意味で使っている人のほうが多いことを紹介した上で、「(不義理や面目のないことがあって、その人の家へ行きにくい。と言う)「敷居が高い」の本来の意味も忘れないでおきたいものですね。」
と控えめに書かれています。

 

もう一つは、未明と言う単語。午前0時から3時までに起きた出来事を深夜と言うと、「今日の夜、深夜」と紛らわしいため、気象庁やニュース報道では、本来の意味とは、ずれているとと認識したうえで、未明を使用しているとのこと。単語の正しい意味が絶対ではないという点で興味深い内容でした。

 

「サバを読む」の「サバ」の正体 NHK気になることば (新潮文庫) [ NHKアナウンス室 ]