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40代の日本人哲学者(現在は京都大学准教授)が、幸福について哲学的に考察したもの。この本のタイトルは、単なる幸福論ではなくて、ひとひねりしたものになっています。現在では心理学や行動経済学、進化生物学といった科学的で魅力的な(魅惑的な)学問が成果を上げている中で、「幸福が依然として哲学の問題になるのはなぜか」という疑問に答える内容です。
幸福というのは哲学以外の学問分野では、考えても仕方がないと切り捨てられることを考えさせられるテーマ。幸福について考えることは、ある意味「今の人生とは別の可能性」について考えること。同じ時代であっても、立場が変われば意味がことなってくること。時代によって意味が変わってくること。実際には実現しなかった人生・・・。こういうことも含めて考えるのが哲学的に幸福を考えることであり、単なる人生訓では哲学としての価値は低い。すべてが易しい内容ではないので、不正確な理解かもしれませんが、こんなことを言ってるような気がします。
易しいたとえ話から始まるものの、最後は結構難しい話になってしまいます。
「幸せのヒント」を与えるという実践的な役割は、心理学や進化生物学にバトンタッチしつつある現状も伝わってきます。
人間の営みは本質的に無意味である。しかし人間は自分を慰めることも、お互いに慰めあうこともできる。慰めの材料になる色々な行為を行う存在でもある。普通の人から見ると、いかにも哲学者らしい人間観も披露されています。