障がい者社長2人の対談本
2人の障がい者社長が語る絶望への処方箋
佐藤仙務(さとう・ひさむ) 恩田聖敬(おんだ・さとし)
発売日: 2017年10月31日頃
著者/編集: 佐藤仙務, 恩田聖敬
出版社: 左右社
発行形態: 単行本
ページ数: 141p
ISBNコード: 9784865281835
(ブログ作成時、アマゾンには在庫がありました)
佐藤仙務(さとう・ひさむ)脊髄性筋萎縮症(先天性の障害)株式会社 仙拓社長
恩田聖敬(おんだ・さとし)ALS(筋萎縮性側索硬化症) 2015年に公表
JリーグのFC岐阜社長を経て、株式会社まんまる笑店設立
二人の社長の対談を収録した本です。
主な内容
会社を設立した時の苦労。経営者としての「やりがい」。二人の仕事観。家族のこと。社員や行政に求めること。IT活用の重要性。それなりに有名になってからの悩み(売名目的で近づいてくる人など)。逆にVIP待遇を受けたエピソードも。就職や起業を安易に考えている人たちへの苦言。など
感想
一般論や万人向けの話ではなく、二人が、自分達の会社、自分達の仕事について語っている部分が多く、非常に興味深い内容でした。
読んでいて、とても気持ちよかったのは、テレビや大手出版社の本と比べて、本音に近い内容が語られているからかもしれません。
少し心配なのは、誰かを批判したり、理想像を押し付けたりするために、この本が使われること。そんな風に利用するのではなくて、困難を乗り越えていくために活用して欲しい1冊です。
絵本作家がお肉の職人たちを訪ねた 中川 洋典
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焼き肉を食べる前に。 絵本作家がお肉の職人たちを訪ねた (エルくらぶ) [ 中川洋典(1961-) ]
食肉市場などで、屠畜(とちく)に直接関わる人たちへのインタビュー集。百聞は一見にしかずと言いますが、見ることによって偏見が強まる可能性もあり、「聞く」ことに重点を置いた内容になっています。(牛は写真ではなくカラーイラスト)
屠畜(とちく)は現在でも、危険が伴い職人技を必要とする作業であること。
各人が役割分担をして協力しながら、流れ作業で行っていくこと。
この職業を特別視する人々と、普通の仕事だと思っている当事者。
食の安全とか、貿易問題などの時事的なテーマではなくて、あくまでも、この職業と社会というテーマに、こだわった内容。食肉市場がどこにあるのか、○○駅の近くと言った説明が一切なしにインタビューが始まります。
特に印象的だったのは畜魂碑に関する考えが食肉市場で働いている人の間でも異なること。生き物を殺しているんだからと畜魂碑に、おまいりしている人もいる。しかし仏教の考え方が職業差別につながるという考えから、お坊さんを呼んで行っていた畜霊祭をやめ、畜霊碑を撤去したという話も。
一時期、いただきます論争がありましたが、これは深入りすると宗教の問題になってしまうので、普通、この話は適当な所で打ち切られてしまいます。そして同じような発想で、このようなテーマ(畜産、屠畜、食肉)を扱うと「いのちをいただく」と言う発想になると思います。先生も(空気を読める大部分の)生徒も、学校では宗教に領域には踏み込まないと思っているので、肝心なことをスルーしつつ、大切なことを考えたという気分を共有できる。ハラール和牛みたいな話につなげることもなく・・・
こういう、もやもやとした気持ちになれるという意味では、良い本だと思います。
(この本のタイトルは「焼き肉を食べる前に。」ですが、本文には焼き肉の話は、あまり出てこないので、サブタイトルの「絵本作家がお肉の職人たちを訪ねた」を見出しにしました)
ぼくはアスペルガーなお医者さん 畠山昌樹
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ぼくはアスペルガーなお医者さん 「発達障害」を改善した3つの方法 [ 畠山昌樹 ]
タイトルの通り、自分自身がアスペルガー症候群である医師が、アスペルガー症候群について易しく解説した本。「アスペルガーなお医者さんによるアスペルガー入門」。TBSダイエット総選挙に指導医として参加。独自に開発したダイエット食で、優勝。一方、本当の総選挙(衆議院選挙)では落選という経歴の持ち主。
相手の立場になれない、行間を読めない、警戒心が強く一人になると安心すると言ったアスペルガーの特徴を、著者が実際に体験したエピソードを通して理解できるようになっています。小学校のクリスマス会でのプレゼント交換、掃除の時間、ジェスチャーゲームなどで体験したことを、拷問のような強烈な経験として記憶しているとのこと。しかし、こうした経験は周囲にアスペルガーに対する理解があれば避けられたかもしれない出来事でもあります。
また第2章「アスペルガーの恋」では、アスペルガーの人が恋愛するには、比喩的な意味ではなくて、文字通り学習と努力と模倣(もてる人の真似)が必要なことを著者の人生を振り返って説明しています。医師と言うこともあってか一度は結婚するも離婚してしまったとのこと。しかし、もっと学習が必要と前向きに考えいるようです。
第3章「アスペルガーな子どもの育て方」では、まずはアスペルガーな子どもの「脳の個性」を理解すること、次に長所を伸ばしていくことを勧めています。短所の克服は本人が必要性を感じた時に取り組むべきで、親が矯正しようとしても上手く行かないという立場です。
その後の章では、患者の気持ちが読めないという欠点を、患者の表情を観察したり、患者とのやりとりのパターンを覚えたりして補っていること、糖分(炭水化物)を減らしたケトン食を実践していることなどが出ています。
ネット上の感想を見ると、医師が執筆するのなら、もっと詳しい(専門的な)情報が欲しいと言うような内容もありました。しかし著者が興味、関心を持っているのは「アスペルガーを専門とする医師」になることではなくて、脳に効くダイエット食の研究や政界進出のようです。こうした選択も尊重される社会が、生きやすい社会なのかもしれません。
ネット上には、幼稚園や小学校の先生に読んで欲しいという感想もありましたが、その通りだなと思います。
長生きできる受診のコツ45 高橋宏和
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3分診療時代の長生きできる受診のコツ45 この「ひとこと」で治療は変わる手おくれを防ぐ病院マニュアル [ 高橋宏和 ]
賢い患者になるためのコツを紹介した本。
(医師とのコミュニケーションのポイントを内科医である著者が解説)
3分診療が当たり前の日本では、患者の側でも短い時間で医師に必要な情報を伝えるスキルが必要。病院に行く前にメモを作るなどの準備をすることで、適切な診察と治療を受けられる可能性が高くなります。
また入院する時、医師に手術を勧められた時、救急車を呼ぶべきか迷った時など重大な決断を迫られた時に適切な選択が出来るようにヒントが書かれています。
例えば入院した時には、気になる症状を、まずは看護師さんに伝えることで適切に対処してもらえる可能性が高まるとのこと。
頭痛や熱、せき、めまいなどの症状がある時の対処法も紹介されています。時間外でも、すぐに病院に行ったほうが良い状態なのか。何科を受診すべきなのかと言った判断基準が易しく説明されています。
全てを医者任せするのではなく、ネットの不確実な情報に翻弄されるのでもなく、一般の人たちも自分の健康は自分で守る知恵を持つべきと言うのが著者の考え。非常に好感の持てる内容の1冊でした。
火災と消防の科学 齋藤勝裕
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火災と消防の科学 (SUPERサイエンス) [ 齋藤勝裕 ]
この本の著者(齋藤勝裕)は、最近ではサイエンスライターのように多数の本を執筆しています。図書館で理系分野の本棚を眺めていると、この人の本が、どんどん増えています。元々の専攻は化学で、化学の教科書も多数執筆しています。
今回のテーマは火災。最も古くから化学が扱ってきたテーマが燃焼なので、火災は化学と関係の深いテーマです。
「可燃物の存在」「酸素」「温度」が火災の3要素。これらの要素を取り除くのが消火の原理。一般的な火災では水をかけることで、酸素を遮断して温度を冷やすことができます。しかしマグネシウムのように水に含まれている酸素を使って燃焼できる(爆発を起こす)物質も存在。
古今東西、様々な火災の事例も紹介されています。
町を焼き尽くした歴史に残る大火(ローマ、モスクワ、ロンドン、江戸、京都など)
大型船や飛行船、森林、鉱山、油田などの大規模な火災。
日本国内で起きた放火事件、火の不始末が重大な結果をもたらした火災など。
やや誤植が目立ち、本格的な内容を期待する人には物足りないかもしれません。
しかしビジネス書のように短時間で読んでしまうのなら、悪くない内容だと思います。
自然な敬語が基本から身につく本 高橋 圭子
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客観的で筋道立てた解説を重視した「敬語の教科書」
短い例文や練習問題が多く、中学、高校の国語の教科書、参考書のような雰囲気。
敬語の体系と最近の傾向について、中学校の教科書のように簡潔に説明されています。
しかし扱っている内容は豊富で、やや高度な内容も含まれています。
「ら抜き言葉」や「~させていただく」と言った特に問題になる表現、間違えやすい表現については詳しく解説。
また従来の謙譲語と、丁寧語に近づいた謙譲語(丁重語、謙譲語Ⅱ)の違いについても扱っています。丁寧語から独立した美化語の説明も。また従来の上下関係ではなく、親しさ(親疎)で敬語を使い分ける考え方も。
最後まで読めば現代的な敬語の考え方も理解できるようになっています。
どちらかと言うと会話集よりも文法書に近い内容なので、敬語を論理的に考えてみたい人向き。
接客用語辞典 尾形圭子
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どんな場面・どんなお客様でもきちんと話せる!接客用語辞典 [ 尾形圭子 ]
用語辞典と言うよりも、衣料品店や飲食店で接客する人のためのハンドブック。
多くの店で通用する標準的なマニュアルのような内容。かなり丁寧な表現が紹介されているので、非常に忙しい店や安売り店では、ある程度妥協しつつ簡略化して使用することになるかもしれません。
特定の表現を覚えるだけでなく、接客の時に使う日本語は日常会話の日本語とは異なる部分があることを理解すること。自分中心の表現ではなくて、相手の立場に立った表現を心がけること。その一方で、店を守り、深刻なトラブルを避けるために、時には、特定の内容に対してのみ謝罪する限定謝罪をしたり、話を打ち切って警察を呼ぶことも必要だとしています。
また通常の接客の他に、電話対応やメール返信のポイントも説明されています。
「もしもし」も、お店での電話対応では失礼とのこと。
最後の章ではスタッフ同士の会話に関する注意点が書かれています。例えば客の前で部下や後輩を叱らないこと。スタッフ同士のやりとりが、客からも見えたり、聞こえたりすることも多いので、こうしたことも大切だなと思いました。