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医者はこうして作られる  東大医学部 安川佳美

東大医学部 医者はこうして作られる  安川佳美

発売日: 2012年01月
著者/編集: 安川佳美
出版社: 中央公論新社
発行形態: 単行本
ページ数: 187p
ISBNコード: 9784120043208


東大医学部の卒業生で現在は女医(執筆当時は研修医)の安川佳美が学生時代の印象的な出来事について紹介している本。

 

東大医学部に特別興味があったわけではないのですが、図書館に置いてあると何となく気になる本だったので借りて来ました。実際に読んで見ると非常に読みやすく興味深い内容でした。

 

講義科目については普通の人は興味ない、説明されても分らないということもあり、試験対策プリント(シケプリ)で要領よく試験をクリアと簡単に紹介。
大半のページでは医学部に進学しないと体験できない様々な実習について紹介しています。

 

医学部と言えば、なんと言っても解剖実習(3ヶ月間)。ただバラバラに切り刻めば良い訳ではもちろんなく、解剖後の試験も大変。

 

病院での最初の実習は介護実習。(こちらは1週間だが体力的には大変)

 

その後は色々な科の診察に付き添ったり、手術を見学したりと言った内容が中心になります。脳外科や産婦人科での帝王切開を見学したり。救急病院や精神科病院での実習も。一つの科について、1週間から2週間まとめて実習を行い、その後次の科に移るというカリキュラムは医学部独特だと思います。

 

指導を担当する医師によって、ムラはあるものの、少人数のグループに分かれて(2人から4、5人程度、時には一人の時も)、実際の患者に接する実習を数多くこなして行きます。

 

この本を読んだ東大医学部の印象は、東大病院では学生のことも普段から先生と呼びエリート意識を刺激する一方で、時々は外部の病院に送り込んで外の世界の厳しさを体験させる。

 

医師の色々な技術のうち、正確な診断を行う能力を特に重視していること。しかし東大病院には外部の医師の紹介状を持参する人が多く、東大病院で一から診察を行う患者は多くないというジレンマを抱えているとのこと。
一方、採血など手技の実習は最低限。

 

東大医学部は何となく研究最優先のイメージがありますが、著者の学生時代は、特に医学研究に興味を持たずに過ごしたようで、診断学を中心に普通に医学を学んでいく所として描かれています。

 

医学部は大学の一般的な学部とは、いかに違うかが良く分かるので、興味ある人にはお勧めの1冊。(家族に医師はいないけど医学部を志望する高校生などにとって参考になりそうな本)

驚異の極限生物ファイル 長沼毅


 

驚異の極限生物ファイル クマムシだけじゃない!過酷な環境を生き抜くタフなやつら [ 長沼毅 ]

 

北極、南極、砂漠、高山、深海などの極限環境に生きる生き物を集めた図鑑のような内容。
(単行本サイズ 143ページ 見開き2ページで一つの生き物を紹介)

 

本当は足の長いペンギン


北極に適応出来るように進化したホッキョクグマ


クリオネバッカルコーン(6本の触手)


もはや常識、らくだのコブの中には脂肪が詰まってる


砂漠に住む蛇やトカゲの仲間


北極と南極を行き来する渡り鳥のキョクアジサン


地味ながらユニークな方法で低温や乾燥、高山に適応している植物

 

 

こうした比較的昔から知られていた生き物の他に、最近注目されている生き物も
色々と紹介。

 

見た目のインパクトも強いダイオウイカやオオグソクムシ(深海に住む巨大ダンゴムシ)

 

海底の熱水噴出孔の近くにいる微生物(バクテリア)と、その微生物を食べるエビやヤドカリの仲間。

 

これらの生き物のほとんどは特定の極限環境に適応しているのに対して極限生物界のスーパースター、クマムシは、どんな環境でも生き残れるの万能選手。しかし普通に活動している時に、つぶされると死んでしまうとのこと。

 

さらに細菌の中には、実験室で自然環境では考えにくい極端な環境を作っても平気な細菌まで。

 

見た目や行動面の特徴から、遺伝子やタンパク質レベルの特徴まで、生き物達が極限環境で生活できる秘密が説明されています。

 

写真やイラストが一部見にくい(分りづらい)のは少し残念。

 

子どもから大人まで生き物に対する好奇心を刺激してくれる1冊。

 

驚異の極限生物ファイル クマムシだけじゃない!過酷な環境を生き抜くタフなやつら [ 長沼毅 ]

 

漫才でわかる中学数学 [ 田畑藤本 ]


 

漫才でわかる中学数学 [ 田畑藤本 ](川村康文 監修)

 

高学歴芸人コンビ、田畑藤本の漫才風の会話を中心に進行するユニークな中学数学入門。。東大工学部卒、藤本淳史(ふじもとあつし)が教師役で、立命館大学卒、田畑祐一(たばたゆういち)が生徒役と言う設定。

ちなみにNHK高校講座「ベーシックサイエンス」で田畑藤本と共演している川村康文教授は本編には登場しません。

 

普通なら、計算すれば分るで済ませてしまう所を、日本語で丁寧に説明しているのが特徴。算数、数学は苦手でも国語や英語は好きな人、得意な人向き。

 

第一章の正負の数では、「お前の財布に、-1万円(マイナス1万円)あずけといたし」みたいな例(説明、一応漫才のボケ)に少し混乱しましたが、その後の割合、速さ、文字式、方程式と言った内容は、すらすらと読めました。
(たまに、引っ掛け問題が出てくるのも印象に残りやすくする効果がありそう)

 

内容的には非常に基本的なことばかりですが、数学が苦手な人にとっては読んでみる価値のある本だと思います。

 

無理せず最後まで読めそうな「読む数学書」

 

漫才でわかる中学数学 [ 田畑藤本 ]

 

 

少しかしこくなれる元素の話  船登惟希


 

 

少しかしこくなれる元素の話 イラストですっきりナットク!! [ 船登惟希 ]

 電子書籍あり

 

化学が苦手と言うよりも、化学に全く馴染みないない人向きの学習マンガ。

1ページ1項目、一コマ漫画のような大きなイラストに4行程度の説明という構成。

 

水素は燃料電池、ヘリウムは風船に入れる気体、リチウムはリチウムイオン電池スマホのバッテリー)、炭素は黒鉛(鉛筆の芯)やダイアモンド、フッ素は歯磨き粉やフライパンのテフロン加工と言うように元素に関する知識を学んでいきます。

 

人間の身体など生物に関する項目では少しレベルアップ。
鉄は血液の中に含まれる酸素の運び屋、これは知ってる人も多いと思いますが、エビやカニの血が青いのは、鉄ではなく銅を含むからというマニアックな内容も。表紙に載っている「パーマはなぜ温泉の臭い?」の答えは予想外でした。

 

元素発見に関するエピソードも、新型のバーナー(ブンゼンバーナー)を開発したり、皆既日食を観察したり、錬金術師が、おしっこを煮詰めたりと色々。(ちなみに、その時発見されたのは尿素ではなくリン)

 

さらに人工的に合成された元素や原子力関連で話題になる元素、毒薬になる元素も。

ニホニウムは既に発見されていたものの正式に命名される前だったため、ウンウントリウムと言う仮の名前で紹介。

 

中学の理科を全く覚えてない人や理科が苦手な人でも30分から1時間程度で無理なく読めそうです。

 

少しかしこくなれる元素の話 イラストですっきりナットク!! [ 船登惟希 ]

大和言葉つかいかた図鑑 海野凪子, ニシワキタダシ

大和言葉つかいかた図鑑

発売日: 2016年01月14日頃
著者/編集: 海野凪子, ニシワキタダシ
出版社: 誠文堂新光社
発行形態: 単行本
ページ数: 197p
ISBNコード: 9784416715918

 

図書館から借りてきた本の中には、30分程度で読み終わってしまって、内容は悪くないけど書店で買うにはコストパフォーマンスが悪いと感じる本が時々あります。
残念ながら、この本は、コスパが悪い典型みたいな本になっています。

 

著者の海野凪子は、仲 里依紗主演でドラマ化されたベストセラー漫画「日本人の知らない日本語」の原作者、本業は日本語教師です。
しかしイラストは別の人です。

 

大和言葉(和語、漢字で書くと訓読みする言葉)を1ページに一つ解説していくのですが、普段使っている日本語と言うこともあり、読み始めると、あっという間に終わってしまいます。日本語教師の先生なので3代目の金田一先生(お爺さんのほう)の解説に似ていて、母語者話者(普通の日本人)にとっては、あっさりしすぎなのかもしれません。風呂は音読みだけど語源的には和語みたいな、この人やはりプロだなと思える部分もあるのですが。

 

漢字が得意な人は、目次だけ見て、漢字で書くとどうなるか予想してから本文を読むと良いかもしれません。「たかをくくる」は高を括る、かまけるは感けると
大和言葉の漢字表記は、日本人にとっても難しいと思います。

ウイルス・細菌の図鑑 技術評論社


 

ウイルス・細菌の図鑑 感染症がよくわかる重要微生物ガイド 最新図解 (知りたい!サイエンスiLLUSTRATED) [ 北里英郎 他 ]

電子版もあり

 

感染症の解説を重視したハンディ版「ウイルス・細菌の図鑑」
(医療系微生物学の入門書)

 

肺炎や「風邪とインフルエンザ」、ウイルス性肝炎と言うように感染症の種類別に微生物が分類されていて、それぞれの感染症についても簡略に説明されています。
口の中の細菌が血管の中に入って心内膜炎になったり、大腸菌が膀胱に入って膀胱炎になるなど、感染症の仕組みについても初心者向けに解説。

 

細菌の写真では、細菌から生えている毛(線毛や鞭毛)まで、はっきり見える3Dイメージ画像を多数収録。電子顕微鏡写真とグラム染色写真(光学顕微鏡写真)の両方を掲載している細菌も多くあります。

 

ウイルスの電子顕微鏡写真も多数掲載されていますが、自分にとっては正直、ぼんやりとした白黒写真にしか見えないものもあります。


3人の著者は北里大学医療衛生学部微生物学研究室所属。
第一回のノーベル賞を受賞できなかった北里柴三郎、2015年のノーベル賞を受賞した大村智教授の業績も簡潔に紹介されています。

 

蛇足ですが、北里柴三郎が設立したのは慶応大学医学部とのこと。Qさまみたいな
難しめのクイズに出るかもしれません。

 

ウイルス・細菌の図鑑 感染症がよくわかる重要微生物ガイド 最新図解 (知りたい!サイエンスiLLUSTRATED) [ 北里英郎 他 ]

 

格差社会にゆれる定時制高校  [ 手島純 ]


 

格差社会にゆれる定時制高校 教育の機会均等のゆくえ [ 手島純 ]

 

通信制高校のすべて」が予想外に面白かったので、同じ著者による定時制高校に関する本も読んでみました。(「通信制高校のすべて」は分担執筆ですが、こちらは単独での執筆)

 

10年ほど前の出版ですが、図書館の書庫(保存庫)に保管されていたので、受付の人に持って来てもらいました。

 

高校教師として定時制高校に赴任して、全日制、特にいわゆる進学校とは大きく異なる経験をした著者本人によるリポートです。

 

第1章では、定時制高校の教師になり、二年目から同じクラスを持ち上がりで4年間担任して生徒達が卒業するまでの出来事が中心(4年制の定時制高校)

 

担任の先生にとって特に気を使うのは障害や病気を抱えた生徒達。あるいは来日から日の浅い外国人の生徒など。一方素行の悪い生徒も少なくないものの、極端に素行の悪い人たちは学校自体に来なくなってしまうので、先生が最後まで面倒を見るという感じにはなりづらい。

 

定時制特有の問題としては昼間授業をやっている全日制高校の先生や生徒との間に起こる葛藤やトラブル。定時制の生徒が掃除をせずに帰ってしまうと定時制の先生が掃除することに。

 

第1章で教師としての体験を綴った後、第2章では卒業生や保護者へのインタビュー。全日制の学校を辞めて定時制に通った後、情報処理や看護の専門学校に通った人。東南アジア出身の生徒、知的障害のある生徒の卒業後の様子、今では少数派になってしまったものの皆無ではない年配の生徒(70代男性)のエピソードが紹介されています。

 

こうした体験談を綴った後、当時、10年ほど前の安倍政権(自民党が下野する前の最初の安倍政権)で進められていた教育改革を批判的に検証し、当時一部で行われていた定時制の教員に対するバッシングに反論しています。

 

この本の当時から10年経った、現在でも定時制高校の統廃合は続いています。自分が住んでいる地域の公立高校でも定時制廃止の方針が打ち出され反対運動もあります。
現時点で10年前を振り返るのも有意義ではないでしょうか。

 

また「通信制高校のすべて」と一緒に読むと、通信制定時制では生徒の抱える問題は似ていても、学校としての立ち居地が対照的なので色々と示唆に富んでいると思います。不登校、校内暴力、いじめ、中退問題の多くを無化してしまう(問題になることが少ない)通信制高校に対して、こうした問題に正面から向き合うことを求められるのが定時制高校。どちらのあり方が望ましいのか、望ましい学校のあり方を考える材料にもなりそうです。

 

格差社会にゆれる定時制高校 教育の機会均等のゆくえ [ 手島純 ]