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感染爆発 見えざる敵=ウイルスに挑む (児童書)


 

 

1918年のインフルエンザのパンデミックスペイン風邪)と、その後の調査研究を物語形式で紹介した児童向け図書。(2005年発行、新型コロナウイルスパンデミックを受けて復刊。)

 

英語からの翻訳なので、アメリカでのパンデミックの様子が、分かりやすく紹介されています。当時のアメリカは既にドイツに宣戦布告して、第1次世界大戦に参戦中。情報を統制し、平和な時以上に多くの若者を犠牲にし、兵士と一緒にウイルスも運んでしまった様子が描かれています。その一方で、パンデミックが起きてしまってからの一般市民の生活は、2020年の世界と類似点もあります。

 

結局、インフルエンザが細菌によるものか、ウイルスによるものかも分からないまま終了した当時のパンデミック
(ネット検索すると、当時、インフルエンザがウイルスによるものだと示す実験を日本人が行っていたものの、あまり注目されなかったという記事も出てきました)

 

 

その後、インフルエンザウイルスが発見され、1918年に流行したウイルスの正体を突き止めようとする研究者も現れます。


インフルエンザで亡くなった人の遺体が火葬ではなく土葬されていたとしても、そこから当時のウイルスを採取することは普通不可能です。しかし、この本に登場する研究者は、ごく少数の遺体は、アラスカやノルウェイの永久凍土に埋葬されたことに注目します。(氷漬けになったマンモスや、人間のミイラであるアイスマンに注目するのと少し似ています)アメリカ側の視点では、協力してくれそうにない旧ソビエトやロシアに対する不満も。


遺体が氷漬けにされてるからと言って、ウイルスが、そのまま保存されるわけではないので、この方法では当初、ウイルスの解析は不可能でした。

(1951年、アラスカでの調査)
しかし科学技術の進歩にともない、21世紀初頭には、1918年当時のウイルスを解析し、遺伝子情報の解読も可能になりました。(ちなみにインフルエンザウイルスの遺伝情報は、DNAではなくてRNAとのこと)

 

アメリカ人の原著者が比較的楽観的なのに対して、翻訳者の西村秀一医師は、訳者あとがきで、パンデミックに警戒するように警鐘をならしています。(この本の初版は2005年、2009年に新型インフルエンザが流行するより前)

 

パンデミックが終われば、それで終わりではなくて、その後の検証が大切と強調している点でも、教育的な内容だと思います

 

 

感染爆発 見えざる敵=ウイルスに挑む [ デイビッド ゲッツ ]