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鈴木雅生(すずき まさお)訳
星の王子さま(小さな王子)の前年、1942年刊行。フランスからドイツへ向かう偵察飛行と「戦争の大儀」がテーマ。日本では読まれることの少ない作品だったが、戦時下(第二次世界大戦、太平洋戦争中)のアメリカ合衆国でベストセラーになった作品。(巻末の解説参照)
1940年5月、ドイツ軍の攻撃で一気に敗色濃厚になったフランス軍。もはや無益、死に行くようなものだと思いつつも、サン=テグジュペリは操縦士(パイロット)として偵察機に乗り込み敵地に向かう。ドイツ軍の攻撃を受けながらも九死に一生を得たサン=テグジュペリは戦争の大義を悟る。
フランスは一度負けてしまったけれど、アメリカと協力して最終的にはナチスドイツに勝利したい。そういう切実な状況の中で書かれた作品。刊行がアメリカ参戦の直後になったこともあって、特にアメリカ合衆国で歓迎されたとのこと。
星の王子さまと違って世界史に興味の無い人には分かりにくい作品と言えそうです。一方、世界史に興味ある人が読むと、第二次世界大戦当時のフランスが一気に身近になると思います。
またナショナリズムとか愛国心について考える材料としても有意義な作品だと思います。偏狭なナショナリズムを体現しているナチスドイツに対して、ヒューマニズム、健全な愛国心、隣人愛、あるいは正義といったもので対抗しようとするサン=テグジュペリの考えは意味があるのか。現在にも、つながってきそうなテーマです。