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パンの世界 基本から最前線まで/志賀勝栄


 

パンの世界 基本から最前線まで/志賀勝栄【1000円以上送料無料】

 

私は一時期、図書館にある様々な分野の入門書を片っ端から読んでいた時期があります。そして思ったのは、馴染みのない分野の入門書でも、言葉でゆっくり説明している本なら結構理解できるということ。逆に、表を覚えこんだり、計算や記号が頻出するような入門書は、レベル的には易しくても、なかなか理解できませんでした。要するに暗記が苦手な文系人間なわけです。

 

 そんな私が、図書館で偶然見かけたのが、この本です。裏表紙の紹介文には「(パンに関する)まったく新しい本格的入門書」と書かれています。本文をぱらぱらと眺めてみると、縦書きで語りかけるような会話調で書かれており、小麦粉を考えるとか、発酵種とは何かと言った基本的な内容を説明している本でした。

 

実際に読んで見ると、学者のように博識で研究熱心なパン職人による特別講義と言った雰囲気です。普通の教科書のように客観的な事実だけを解説する本ではありません。かといって自分の経験のみに基づいて、自分のやり方だけを説明しているわけでもありません。両方がミックスされた内容です。

 

例えば第3章「小麦粉に考える」では、薄力粉と強力粉の違い、ライ麦と小麦の違いと言った基本をふまえつつ、著者自身(志賀勝栄)は、どんな産地のどんな小麦を主に使っているのかについても説明しています。国産小麦の性質とか、食パンに合った小麦粉とバゲット(フランスパン)に合った小麦の違いなど。

 

著者がこだわっているのは発酵食品としてのパン。そのため第4章の「発酵種とは何か」では、一般的なイーストの他にも色々な発酵種(天然酵母)が紹介されています。酵母の他に乳酸菌の話も。言葉としてはアルコール発酵とか乳酸発酵と言う専門用語も出てくるのですが、化学や生物の教科書と違って元素記号は出てこないので、特に抵抗なく読めました。また発酵に関しては、著者が研究を続けている長時間発酵でのパン作りも解説されています。

 

その他にも、第1章と第2章では、パンの歴史や日本、フランス、ドイツなどのパン事情が紹介されています。現在のパンの定義では、パンは発酵食品ですが、パン発祥の地である中東では、無発酵のパンが作られ続けているとのこと。

 

第5章では水と塩の役割、具体的なパン作りについては第6章で説明されています。

 

理論的な説明と著者個人の体験談が絶妙にミックスされていて、最後まで退屈せずに読めました。

 

多少高くても美味しくて健康に良いパンを食べたくなる本。

 

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