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腸内細菌が家出する日 藤田 紘一郎

 

 

腸内細菌が家出する日 健康も人生も思いどおりにいかないのはナゼ?
藤田 紘一郎

発売日: 2016年07月21日頃
著者/編集: 藤田 紘一郎
出版社: 三五館
発行形態: 単行本
ページ数: 186P
ISBNコード: 9784883206728

 

寄生虫の研究で有名な著者。自分自身のお腹の中にサナダムシを飼っていたエピソードでも有名な先生です。大学を退官後も、生物や医学に関するエッセイを精力的に執筆しています。

 

 この本のテーマは生き物と生き物の共生。(一方的に寄生しているような生き物も含まれますが、その場合でも、環境全体で見れば上手く行っているので、寄生する、寄生されるという関係が続いていると著者は考えています)

 

著者が大学院の学生時代に研究していたのはトキソプラズマと言う単細胞の寄生虫(原虫)。名前に虫が入っていますが、白血球よりも小さい微生物です。このトキソプラズマを例にして、寄生生物の興味深い性質を説明しています。寄生生物は、ずっと同じ種類の生き物にいるわけではなく、トキソプラズマの場合は、猫、猫のフン、ねずみを経て、また猫に戻っていきます。(人に感染することもあります)

 

次に、蟻や蚊、カタツムリ、ゴキブリ、カニなど様々な生き物に寄生する寄生生物が紹介されています。寄生生物が寄生先の生き物である宿主をコントロールしているようなケースも数多くあります。 

 

そして後半部分は、注目度の高い腸内細菌とヒトの健康について。免疫やアレルギーの話も腸内細菌の話と関連付けて考えると、「異物を排除して外敵から体を守る」と言う単純な話ではないという気がしてきます。例えば、赤ちゃんの腸内では、全ての菌を排除してしまうのではなくて、腸内細菌の選別が行われるとのこと。さらに人間の場合でも腸内細菌が肥満の原因になったり、脳に影響を与えたりする可能性を指摘しています。

 

現代人は、快適な生活と目先の利益ばかり追い求め、人間とって必要不可欠な腸内細菌が家出してしまうような事態を招いていると警告しています。

 

余談ですが、この本を読んでいて今年夏のヒアリ騒動を思い出しました。ヒアリが怖いからと普通のアリまで駆除してしまうと、ヒアリの繁殖が早まるので行わないようにと警告されていました。生き物同士の関係を理解することは大切だなと再確認。