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極限環境の生き物たち なぜそこに棲んでいるのか (知りたい!サイエンス) 大島泰郎


 

電子版あり

 

個人的にはアトピー性皮膚炎の話から少し興味を持った微生物学


地元の図書館に行くと、基礎医学、生物学、発酵食品(発酵学)の本棚に
分散して数冊ずつ微生物に関する本が置かれています。
医学書のコーナーにある微生物の本は内容も難しく、ウイルスと細菌の羅列のような内容なので、生物学のコーナーにあった読みやすそうな本を借りて来ました。

 

最近は生命の起源との関係で注目されることの多い極限環境の微生物。
この本の主役は沸騰するような熱湯の中でも生きられる好熱菌です。

 

「極限環境の生き物たち」というタイトルだと生き物図鑑みたいですが、
実際の内容はタンパク質とかDNAが登場する生物学寄りの内容です。
(人間など大部分の生物が死んでしまう熱湯の中も一部の微生物が生きられる理由などが解説されています)


しかし、いたずらに難解な内容、細かい内容を追求するのではなくて
中学、高校レベルの生物の内容と関連付けた分かりやすい内容です。

 

後半、微生物以外では非常に珍しい極限生物としてクマムシが登場しますが、
クマムシは実験動物として(小さなモルモット)として宇宙に連れて行かれたり、乾燥させられたりする話が中心。一方、著者の専門とする好熱菌に関しては、DNA鑑定を初めとする生命科学や産業の分野で役立っていることが力説されています。この本の真の狙いは個別の生き物に関して博物学的な興味を持った中学生、高校生を現代の生命科学に誘うことかもしれません。

 

そのためか科学実験の難しさについても詳しく書かれています。
生命科学の実験は研究者に捏造の意図が無くても、しばしば間違いが起こることを具定例を挙げて説明しています。その後で紹介されているパスツールの有名な実験が印象的。この本で詳しく説明されているように一部の微生物は熱湯の中でも死にません。また胞子の状態なら死なない微生物もいます。そのため実験としては間違っているのだけど、当時は正しい実験とされ生物学に影響を与えた例として紹介されています。(こういう話は心理学なんかでは普通にありそうですが、生物の有名な実験を例に紹介されていると驚きました)

 

顕微鏡で細胞(コルクの細胞壁)を発見したフック、それより後に超高性能虫眼鏡(レンズが一枚しかない)を使って微生物を発見したレーベンフック。二つのエピソードが順番に書かれているのも面白かったです。

 

全体的に読みやすい文章で適度な脱線もあり最後まで楽しく読めました。
高校1年生や2年生あたりの夏休みの課題図書に良さそうな1冊。

 

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