デンマーク幸福研究所の本
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幸福について客観的なデータを集め、社会科学的に研究するシンクタンク「幸福研究所」。幸福研究所のCEOが、幸福研究の成果と、その応用を分かりやすく語ります。また福祉国家デンマークの在り方と「幸せ」を関連付けて論じているのも大きな特徴です。原著はデンマーク語でデンマークの読者向けに書かれたもの。
私は、中公新書、長谷川宏の「幸福とは何か」を読んでいたのですが、なかなか読み終わらないので(まだ古代のギリシアあたり)、浮気するように、こちらの本を読み始めました。
長谷川宏の本が、西洋哲学の歴史を辿るものなのに対して、こちらは応用心理学的な側面が強く、統計データを駆使する、いかにも現代的な内容。
この本で紹介されている具体例
やっぱり結婚してる人のほうが、結婚しない人より幸せ。でも、結婚する人でも結婚(正確には、結婚の少し前)をピークに、幸福度は減少していく。
やっぱり、お金は大切。でも、お金持ちに囲まれて自分だけ中流レベルなのよりも、世界的に見れば中流でも、知り合いの中で一番、お金持ちのほうが幸せ。
選択肢は、ないよりもあったほうが良いけれども、選択肢が多すぎるのは逆効果。
(この話は行動経済学の成果として有名で、いろいろな場面で応用されているようです)
客観的なデータを重んじる社会学的、心理学(行動経済学)的な研究の紹介が中心で、そうした研究に興味を持てる人向き。
また、この本は、「私が幸せになりたい(私だけは幸せになりたい)」という人向けに書かれたわけではありません。幸せな人が多い「より良い社会を作りたい」、政治、行政、福祉、地域環境を改善させたいと考える人に役立つことを直接の目標としています。幸福とという曖昧になりがちなものを可視化して、それなりの評価基準を提示する。本書の日本語タイトルが、幸せになる方法ではなくて、「幸せ」の定義となっているのも、政治、経済、福祉などへの応用を意識しているからだと思います。
哲学的な内容とは別の意味で、読む人を選ぶ内容かもしれません。しかしリベラルな立場から政治や社会に関心を持つ人には、いろいろと参考になりそうです。
個人的には行動経済学の持つ何となく嫌な感じがなくなって、温かい社会科学になっていると感じました。
デンマーク幸福研究所が教える「幸せ」の定義 [ マイク・ヴァイキング ]