好きなことを知っている人は、しあわせ

好きなことを知れば幸せになれる。好きなことが分からないと幸せになるのは難しい    

長谷川宏の「幸福とは何か」と一緒に読んでほしい本

昨年中公新書から出版された「幸福とは何か」。

この本の著者の長谷川宏氏には、亡くなられた奥さん摂子さんとの共著(対談本)「しあわせのヒント」という本があります。(河出書房新社から1997年の出版。現在は品切れ。)西洋哲学史に準拠して幸福を論じた「幸福とは何か」。一方、子育てを含む家庭生活と、学習塾での実践という実体験に基づいて話をしている「しあわせのヒント」は実に対照的な内容です。両方を読むことで、幸せに関する様々なヒントが得られるような気がします。図書館の書庫に保管されていたり、古本としてネット書店で扱っていたりするので、興味のある方はぜひご覧ください。

 

以下は感想などを、だらだらと。


中公新書の「幸福とは何か」を読み始めたところ、以前「しあわせのヒント」を読んだことを思い出しました。そのため「幸福とは何か」は、ひとまず置いておいて、「しあわせのヒント」を読み始めました。「しあわせのヒント」は以前読んだことがあり、夫婦による対談本ということもあって、「しあわせのヒント」のほうが先に読み終わりました。


非常に乱暴に要約すれば、しあわせになりたいなら、生身の人間同士の関係が大切。一人、一人の個性を尊重して、お互いに刺激を与えあう。大人は精神的な余裕をもって、子どもたちから生命力をもらう。お互いを束縛したり競争したりするのではなくて、ゆるくつながりながら、一緒に学んだり、演劇などで一緒に活動できたら理想的。


非常に魅力的な内容ですが、反面、人を選ぶタイプの幸福論という気もします。頭の良さやコミュニケーション能力、性格の良さを兼ね備えてないと、この種の幸せは難しいという気もします。テレビゲームの普及は、この本で論じているような幸福を、さらに困難にしているのかもしれません。一方、性格や才能に恵まれた人々が、この本に書かれているような「しあわせ」を追求することで、社会全体が良くなるような、そんな淡い希望を抱かせる内容でもあると思います。

 

まだ一部しか読んでいないのですが、「幸福とは何か」にも、「しあわせのヒント」とつながるような気もする内容もあります。(この部分は特に、私の独善的な読み方で一般的な読み方ではないと思いますが)

 

序章で引用されている佐野洋子の絵本「100万回生きたねこ」。長谷川摂子さんも絵本作家でした。主人公の「のらねこ」を著者の宏氏、「白い猫」を摂子さん、二匹の間に生まれた子猫たちは、実の子どもだけではなく塾で学んだ子どもたちを象徴しているといった読み方も出来るのかもしれません。

 

もう一つ、「幸福とは何か」第3章、20世紀の幸福論冒頭で論じているメーテルリンクの青い鳥。「しあわせのヒント」を読んで、振り返ると「青い鳥」は「子どもたち」を象徴しているような気もします。幸せの象徴ではあるけれども、ずっと所有し続けることはできないもの。

 

ある程度接点はあるものの、正反対のアプローチで書かれた「幸福とは何か」と「しあわせのヒント」。一緒に読むことで、普通の読書では得難い何かを得られるような気がします。

 

 

しあわせのヒント

河出書房新社
長谷川 宏(はせがわ ひろし、1940年4月1日 - )
長谷川 摂子(はせがわ せつこ、1944年2月8日 - 2011年10月18日)

単行本 B6変形 ● 192ページ
ISBN:978-4-309-24191-3 ● Cコード:0037
発売日:1997.08.11

定価1,296円(本体1,200円)

×品切・重版未定