好きなことを知っている人は、しあわせ

好きなことを知れば幸せになれる。好きなことが分からないと幸せになるのは難しい    

日高敏隆 世界を、こんなふうに見てごらん


 

 

著者は動物行動学者。晩年の連載と講演を収録したエッセイ集。

個人的には、かなり前に、なんとなく見ていた放送大学の番組に出演したのを覚えています。お喋りが上手く面白い先生という印象でした。(本文中にも、自分は話が面白い人と評価されていて、出版関係の賞をもらったりするが、学会からは評価されないと言ったことが書かれています)

 

この本も非常に読みやすい科学エッセイです。アマゾンのレビューに中学生の読書用に読ませた話が載っていましたが、一人で読むなら中学生から、先生が授業で使うなら小学生から読めそうな内容です。

 

「なぜ」を問い続けること
観察は大切
体験も大切
理屈に騙されるな
1つのことにしがみつくべきではない
人と直接会うことが大切
人間の力を過大評価しても過小評価してもいけない

 

箇条書きにすると教訓じみたこと並べたようになってしまいますが、実際には、柔軟なものの見方、バランスの取れた思考の大切を説いた内容です。具体例として、動物、特に蝶などの昆虫の話が色々出てきます。(蝶のメスとオスは人間には区別できないが、蝶は紫外線も見えるから雌雄を区別できると言う話など)

 

最後に収録されている講演では、幽霊とはイマジネーション(想像力)欠如の産物であると、ユニークな方法で科学的な思考の大切さを説いています。(上手く説明できないことがある時に、短絡的に幽霊のせいにしてしまうのが人間)これは自然科学だけでなく、政治とか経済を考える時にも教訓になりそうです。

 

いかにも昭和の科学者と言う雰囲気のエッセイ。平成、特に21世紀になってから見失ってしまったものを考える「きっかけ」にもなりそうです。

 

世界を、こんなふうに見てごらん (集英社文庫) [ 日高敏隆 ]