絵本作家がお肉の職人たちを訪ねた 中川 洋典
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焼き肉を食べる前に。 絵本作家がお肉の職人たちを訪ねた (エルくらぶ) [ 中川洋典(1961-) ]
食肉市場などで、屠畜(とちく)に直接関わる人たちへのインタビュー集。百聞は一見にしかずと言いますが、見ることによって偏見が強まる可能性もあり、「聞く」ことに重点を置いた内容になっています。(牛は写真ではなくカラーイラスト)
屠畜(とちく)は現在でも、危険が伴い職人技を必要とする作業であること。
各人が役割分担をして協力しながら、流れ作業で行っていくこと。
この職業を特別視する人々と、普通の仕事だと思っている当事者。
食の安全とか、貿易問題などの時事的なテーマではなくて、あくまでも、この職業と社会というテーマに、こだわった内容。食肉市場がどこにあるのか、○○駅の近くと言った説明が一切なしにインタビューが始まります。
特に印象的だったのは畜魂碑に関する考えが食肉市場で働いている人の間でも異なること。生き物を殺しているんだからと畜魂碑に、おまいりしている人もいる。しかし仏教の考え方が職業差別につながるという考えから、お坊さんを呼んで行っていた畜霊祭をやめ、畜霊碑を撤去したという話も。
一時期、いただきます論争がありましたが、これは深入りすると宗教の問題になってしまうので、普通、この話は適当な所で打ち切られてしまいます。そして同じような発想で、このようなテーマ(畜産、屠畜、食肉)を扱うと「いのちをいただく」と言う発想になると思います。先生も(空気を読める大部分の)生徒も、学校では宗教に領域には踏み込まないと思っているので、肝心なことをスルーしつつ、大切なことを考えたという気分を共有できる。ハラール和牛みたいな話につなげることもなく・・・
こういう、もやもやとした気持ちになれるという意味では、良い本だと思います。
(この本のタイトルは「焼き肉を食べる前に。」ですが、本文には焼き肉の話は、あまり出てこないので、サブタイトルの「絵本作家がお肉の職人たちを訪ねた」を見出しにしました)