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癒しの時代をひらく 上田紀行

今週のお題「私の癒やし」

 

とりあえず「今週のお題」が更新される前に読み終わったのですが、なかなか感想を書きづらい本ですね。内容の多くは、1994年から95年にかけて 法藏館という出版社の「仏教」と言う雑誌に掲載されたもの。雑誌「仏教」1995年4月号の特集は「癒し」。200ページ以上の大特集で、河合隼雄木村敏小田晋柳澤桂子と当時、心理学や精神医学に興味を持っていた人には懐かしい顔ぶれが並んでいます。(柳澤桂子生命科学者ですが)当時、癒しについて、どんな風に理解されていたのか参考になる資料かもしれません。(雑誌の方は読んでませんが)

 

仏教 No.31  1995.4 特集=癒し


癒しの元祖、上田紀行は自分探しの着地点として癒しを考えていたようです。オウム真理教事件の前後、独りよがりの解脱(げだつ)をするのではなくて、自分と他者のつながりの中で存在全体が救済されることを癒しと考えています。

 

癒し、そのものを考察するというよりは、多重人格やアムウェイネットワークビジネス)、絵画のキャッチセールス(固有名詞は出てこないものの、ラッセンの絵画が思い浮かびました)、援助交際、宗教団体の機関紙(自己分析のワークを掲載)、尾崎豊上々颱風(シャンシャンタイフーン)などに関して、この営みは癒しに通じているのだろうかと考察しています。普通の人の場合、気持ちいいかどうかで話は終わってしまいそうですが。いちいち、これは本物の癒しにつながるのだろうかと考えるのは、上田紀行には宗教人類学というバックボーンがあるからでしょうか。

 

20年以上前の話なので、当時の記憶がある40歳以上の人には比較的分かり易い一方で、当時の記憶のない若い人には理解しにくい部分もありそうです。上田紀行には岩波新書から出ている「 生きる意味」と言う読みやすい本もあるので、今となっては、そうした本を読んで興味を持った人が読めば充分かもしれません。

 

個人的に今読んでも面白いと思ったのはアムウェイに関する考察。最近、流行りのユーチューバーやプロブロガ-と比べて類似点と相違点を考えると、本質的な癒しを考えるヒントになるかもしれません。

 

癒しの時代をひらく
発売日: 1997年03月
著者/編集: 上田紀行
出版社: 法蔵館
発行形態: 単行本
ページ数: 237p
ISBNコード: 9784831872302


生きる意味 (岩波新書
上田紀行

ISBN:9784004309314
2005年01月発売 / 岩波書店 / 新書