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格差社会にゆれる定時制高校  [ 手島純 ]


 

格差社会にゆれる定時制高校 教育の機会均等のゆくえ [ 手島純 ]

 

通信制高校のすべて」が予想外に面白かったので、同じ著者による定時制高校に関する本も読んでみました。(「通信制高校のすべて」は分担執筆ですが、こちらは単独での執筆)

 

10年ほど前の出版ですが、図書館の書庫(保存庫)に保管されていたので、受付の人に持って来てもらいました。

 

高校教師として定時制高校に赴任して、全日制、特にいわゆる進学校とは大きく異なる経験をした著者本人によるリポートです。

 

第1章では、定時制高校の教師になり、二年目から同じクラスを持ち上がりで4年間担任して生徒達が卒業するまでの出来事が中心(4年制の定時制高校)

 

担任の先生にとって特に気を使うのは障害や病気を抱えた生徒達。あるいは来日から日の浅い外国人の生徒など。一方素行の悪い生徒も少なくないものの、極端に素行の悪い人たちは学校自体に来なくなってしまうので、先生が最後まで面倒を見るという感じにはなりづらい。

 

定時制特有の問題としては昼間授業をやっている全日制高校の先生や生徒との間に起こる葛藤やトラブル。定時制の生徒が掃除をせずに帰ってしまうと定時制の先生が掃除することに。

 

第1章で教師としての体験を綴った後、第2章では卒業生や保護者へのインタビュー。全日制の学校を辞めて定時制に通った後、情報処理や看護の専門学校に通った人。東南アジア出身の生徒、知的障害のある生徒の卒業後の様子、今では少数派になってしまったものの皆無ではない年配の生徒(70代男性)のエピソードが紹介されています。

 

こうした体験談を綴った後、当時、10年ほど前の安倍政権(自民党が下野する前の最初の安倍政権)で進められていた教育改革を批判的に検証し、当時一部で行われていた定時制の教員に対するバッシングに反論しています。

 

この本の当時から10年経った、現在でも定時制高校の統廃合は続いています。自分が住んでいる地域の公立高校でも定時制廃止の方針が打ち出され反対運動もあります。
現時点で10年前を振り返るのも有意義ではないでしょうか。

 

また「通信制高校のすべて」と一緒に読むと、通信制定時制では生徒の抱える問題は似ていても、学校としての立ち居地が対照的なので色々と示唆に富んでいると思います。不登校、校内暴力、いじめ、中退問題の多くを無化してしまう(問題になることが少ない)通信制高校に対して、こうした問題に正面から向き合うことを求められるのが定時制高校。どちらのあり方が望ましいのか、望ましい学校のあり方を考える材料にもなりそうです。

 

格差社会にゆれる定時制高校 教育の機会均等のゆくえ [ 手島純 ]