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皮膚に聴く からだとこころ 川島眞 PHP新書

皮膚に聴くからだとこころ

皮膚に聴くからだとこころ
著者:川島真
価格:820円(税込、送料込)
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皮膚(皮膚科、皮膚科学)に関する本は、科学的ではあるものの内容が細かすぎて難しすぎたり、逆に、内容は分かりやすいものの科学的な根拠が曖昧だったりします。しかし、この本は、体と皮膚、心と皮膚の関係を出発点にして、分子レベルのミクロの話から、生活習慣やストレスの話まで、上手く両立させています。


さらに最新の研究から著者の臨床経験や個人的な経験まで幅広い内容が盛り込まれています。

 

皮膚は内臓の鏡と言いますが、それにとどまらず、広い視野とミクロの眼を両立させた珍しいタイプの入門書(皮膚科学入門)

 

皮膚に症状が出る内臓疾患や皮膚感染症、美容皮膚科の話も出ていますが、
最も印象的だったのは、アトピー性皮膚炎に関する第3章。

 

ステロイドバッシングが起こったり食物アレルギーが強調されたのは、アトピー性皮膚炎の病理が良く分からない状況で、ステロイドや食物アレルギーがスケープゴートにされたようなものと考え、その後の研究の進歩について紹介しています。(遺伝要因やバリア機能の障害など)

 

また基礎研究とは別に、臨床現場での経験から心理的な要因がアトピー性皮膚炎に影響していると考えられるようになったことを示しています。

 

金沢大学の竹原和彦教授とともにアトピービジネスを批判する活動を続けてきたとも書かれていますが、竹原教授の本と比べると、穏健派、ハト派という印象を受け、普通の人にとっては受け入れやすい内容だと思います。

 

著者は、これまでの人生を振り返って、がむしゃらに頑張って39歳で教授になったこと、しかし頑張りすぎて体調不良に悩むようになってからは、80点主義で皮膚を初めとする、からだの声に耳を傾けられるようになったこと。

さらに患者の声に耳を傾けることで、より満足できる治療が出来るようになったことを紹介しています。

 

これらのエピソードがアトピー性皮膚炎の心理的要因と合わせて紹介されていて印象的でした。

 

この本を読んだのは2回目ですが(前の記事参照 アトピーと患者の知を読んだついでに、もう一度読んでみました)、新書版で160ページ程度の薄い本なのに、今回も興味深く読めました。見かけよりも内容の詰まっている1冊だと思います。