好きなことを知っている人は、しあわせ

好きなことを知れば幸せになれる。好きなことが分からないと幸せになるのは難しい    

ちいさな王子(星の王子さま)


 

 

星の王子さまと言う日本語タイトルで知られる作品。サン・テグジュペリの作品は、今年3月に「戦う操縦士」が翻訳出版されています。既に出版されている「夜間飛行」「人間の大地」とあわせて、光文社の古典新訳文庫で読むことが可能になりました。
星の王子さま」以外の作品ではパイロットとして経験した極限状況が描かれています。そうした作品を読んだ後で、「ちいさな王子(星の王子さま)」を読むと、星の王子さまだけを読んだ時とは違った感想を抱くかもしれません。

 

本書の翻訳、解説は野崎歓(のざき かん)東大教授(出版時は助教授)

 

翻訳としては、あっさりしているという印象。読んでいる人が立ち止まらずにテンポよく一気に読んでしまう様な文体。絆という日本語をあまり使っていないのが印象的。小さな王子と「ぼく」の関係は、絆と言うよりも友愛という言葉のほうが、しっくりくる関係なのかもしれません。

 

原版から複製されたイラストも印象的。

 


訳者あとがきと解説からの豆知識

 

中国語タイトルは「小王子」。多くの国では「ちいさな王子」のように直訳されている。

 

「愛するとは、見つめあうことではなく、一緒に同じ方向を見つめること」
サン・テグジュペリ「人間の大地」にある箴言(しんげん)

 

ちいさな王子 (光文社古典新訳文庫) [ アントアーヌ・ド・サン・テグジュペリ ]

 

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サン=テグジュペリ 戦う操縦士 光文社古典新訳文庫


 

鈴木雅生(すずき まさお)訳

星の王子さま(小さな王子)の前年、1942年刊行。フランスからドイツへ向かう偵察飛行と「戦争の大儀」がテーマ。日本では読まれることの少ない作品だったが、戦時下(第二次世界大戦、太平洋戦争中)のアメリカ合衆国でベストセラーになった作品。(巻末の解説参照)

 

1940年5月、ドイツ軍の攻撃で一気に敗色濃厚になったフランス軍。もはや無益、死に行くようなものだと思いつつも、サン=テグジュペリは操縦士(パイロット)として偵察機に乗り込み敵地に向かう。ドイツ軍の攻撃を受けながらも九死に一生を得たサン=テグジュペリは戦争の大義を悟る。

 

フランスは一度負けてしまったけれど、アメリカと協力して最終的にはナチスドイツに勝利したい。そういう切実な状況の中で書かれた作品。刊行がアメリカ参戦の直後になったこともあって、特にアメリカ合衆国で歓迎されたとのこと。

 

星の王子さまと違って世界史に興味の無い人には分かりにくい作品と言えそうです。一方、世界史に興味ある人が読むと、第二次世界大戦当時のフランスが一気に身近になると思います。

 

またナショナリズムとか愛国心について考える材料としても有意義な作品だと思います。偏狭なナショナリズムを体現しているナチスドイツに対して、ヒューマニズム、健全な愛国心、隣人愛、あるいは正義といったもので対抗しようとするサン=テグジュペリの考えは意味があるのか。現在にも、つながってきそうなテーマです。

戦う操縦士 [ サン=テグジュペリ ]

おたんこナース(看護婦マンガ)


 

 

少し闇を抱えながらも憎めない新人看護婦、似鳥ユキエ(にたとりゆきえ)。
1990年代、まだ看護師さんが看護婦さんと呼ばれ、独特のナースキャップを被っていた時代の医療漫画です。漫画ならではの際どいエピソードを、コミカルに描いています。

 

初出は青年誌の週刊ビックスピリッツ。看護婦さんや看護学生向けに書かれたものではなくて、男性向けに「看護婦さんは大変なんだから、しょうもないことで困らせるんじゃないよ」と言う視点で書かれています。(看護婦さんは女性が当たり前で、男性の看護師さんは、一般の人には馴染みが薄かった時代です)

 

差し入れやお土産をもらうよりも、業務が円滑に進むように患者のほうでも考えて行動して欲しい。こういうことは、医師や看護婦側からは言いづらいと思います。しかし、コミカルで極端なエピソードを漫画で描くことで、多くの人に伝わるようになっています。ものすごく深刻な病気の時は、こういう漫画を見ている余裕はないでしょう。しかし比較的簡単な手術をして、しばらく入院するみたいな時に眺めておくと気持ちよく入院生活が送れそうです。そういう意味では、読むワクチンみたいな漫画です。

 

がんの告知をめぐり葛藤するエピソードは、当時の時代背景を反映していると思います。進歩が非常に早いのが医療の世界。細かいところを見ていくと、時の流れを感じさせる場面も色々ありそうです。

 

豆知識
男女を問わず看護師と呼ぶようになったのは2003年から。「おたんこナース」の連載が始まったのは1995年なので、当時は看護婦(男性は看護士)が正式名称。

おたんこナース(1)【電子書籍】[佐々木倫子 小林光恵 ]

おそ松くんベスト・セレクション (ちくま文庫)


 

 

六つ子全員が同じ顔。昭和の「おそ松くん」から18話を選んで、ちくま文庫に収録。アニメおそ松さん第一期がヒットした2016年の出版。初出は週刊少年サンデー、昭和37年から昭和43年。

 

50年以上前の作品ですが、漫画(イラストや活字)は現代の技術で綺麗に修正されています。一方、言葉遣いに関しては現代では問題となりそうな言葉も原作を尊重しています。

 

イラストが綺麗で、時事ネタが比較的少ないこともあって、古さを感じさせない作品が多数。今読んでも、それほど違和感はありません。しかしオープンリールのテープが登場したりと、時代を感じさせるアイテムも。ハタ坊が外国の大富豪の跡継ぎになったりと内容的にも時代を感じさせる話も。

 

イヤミメインではなくて、ちゃんと六つ子が登場する作品が選ばれています。基本設定とは違う世界(時代劇とか西部劇など)に、6つ子が登場する話も、いくつか収録されています。また最後の話は、家庭教師をつけても全く勉強しない六つ子の話。あたかもアニメの「おそ松さん」につながるような内容になっています。

 

おそ松さんのブームは終わっても、原作の「おそ松くん」は読み継がれていきそうです。

 

おそ松くんベスト・セレクション (ちくま文庫) [ 赤塚不二夫 ]

 

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まんがトキワ荘物語 手塚治虫 他 祥伝社新書

赤塚不二夫石ノ森章太郎との思い出を描いています。

 

赤塚不二夫「ギャグゲリラ」

週刊文春連載の時事漫画

 

おそ松さんを見て思い出したこと

バカだと思われないための文章術 ラリー遠田

バカだと思われないための文章術 誰も教えてくれなかった基本中の基本
ラリー遠田(2013年発行 品切れ)

 

バカ文章(ダメな文章)の特徴を示して改善法を列挙した本。自分で書いた文章の問題点をチェックして自己添削を行う時に参考になりそうです。

 

バカ文章の具体例
長すぎる文章、曖昧な文章、不必要な単語を使っている、リズムが悪い、文章がねじれている、失礼、読み手を意図せずに不快にするなど。


こうした問題点の多くは、自分の書いた文章を丁寧に読み直せば、自分ひとりでも直せそうです。(著者は音読によるチェックを勧めています)

 

全体的に、減点法で文章を見ている項目が多くなっています。また良い文章を書くコツは、プロの書いた「ちゃんとした文章」を沢山読むこと。(楽をする方法は載っていません)

 

ちゃんとした文章を書けるようになるための「文章マニュアル」と言った内容です。

 

著者はお笑い評論家のラリー遠田(個人的には、R-1グランプリに関する評論のスペシャリストと言うイメージがあります)。お笑いに関しては、あまり言及していませんが「評論の書き方」と言う項目はあります。愛が大切、褒めるつもりで書く、大胆かつ謙虚に、と言ったポイントが書かれています。また、特にネット上の文章では悪口を書くべきではないと言う話も。

 

現在品切れ

バカだと思われないための文章術 誰も教えてくれなかった基本中の基本

発売日:  2013年10月08日頃

著者/編集:  ラリー遠田

発行元:  学研パブリッシング

発売元:  学研プラス

発行形態:  単行本

ページ数:  191pI

SBNコード:  9784054058095

手話を生きる 斉藤道雄


 

 

手話を第一言語として、学ぶ、考える、日本で生活するのは、どういうことなのか。
手話と「ろう教育」をめぐる、歴史的な経緯や最近の動向、課題や葛藤などを描いています。著者は、明晴学園の初代校長(TBSの元報道記者)。明晴学園は手話による教育を行っている私立の「ろう学校」。この本は、明晴学園で使用している日本手話を支持する立場で書かれています。

 

手話が、ある程度注目されていることもあって、「ろう」とか「聴覚障害」の世界は単純ではないということが、身近に当事者の人がいなくても何となく伝わってくるようになりました。NHKの福祉番組を見ていると、聴覚障害のある人でも、手話を使う人、読唇術のような口話中心の人、人工内耳を付けている人と多様です。また医師として活躍したり、一流大学で学ぶ人がいる一方で、日本語の習得に苦しむ人も登場します。
そんな多様な世界の中で、日本手話を第一言語とした学校で学ぶ生徒、手話で教える先生たちの喜びや葛藤を描いています。(それ以外の環境で学ぶ、生活する人のほうが多数派です)

 

これ以上細かい内容に言及するのは素人には難しい部分も多いので、以下は、個人的な感想です。

 

著者の主張が正しいかは別として、著者の気持ちは良く分ると思いながら読みました。普通の日本語を使っている多数派の日本人にとっても気持ちを伝えることは難しい。気持ちが伝わらなかったり、気持ちを否定されるのが怖い。だから日本語は実用的な情報のやりとりだけにしたいと思うときもある。でも気持ちが伝わった時は、とてもうれしい。本当は表情とかも含めて気持ちを表現したい。こんな風に考えると、日本手話、あるいは明晴学園が大切にしている価値観は、普通の音声による日本語を使っている人にも大切だと思えます。

手話を生きる 少数言語が多数派日本語と出会うところで [ 斉藤道雄 ]

食物アレルギーキャラクター図鑑 赤澤晃


 

 

キャラクター図鑑シリーズの最新刊。卵や小麦を初め、食物アレルギーを引き起こす食べものが擬人化されたキャラクターで紹介されています。パラパラと眺めてみると、擬人化されたキャラクターの大きなイラストが目立ちます。しかし説明文を読んで見ると、最新の知識が分りやすく解説されています。

 

卵アレルギーは(普通)白身が原因。うずらの卵でも起こる一方で、卵と鶏肉の両方でアレルギーを起こす人は少ない。卵アレルギーや小麦アレルギーは、おっぱい(母乳)を通して赤ちゃんに起こることもある。

 

そばや落花生(ピーナッツ)は、アレルギーを起こす頻度は少ないが、重症のアナフィラキシーを起こす危険性は高い。学校給食などでは特に注意が必要な食べもの。

 

加熱したり発酵させたりするとアレルギーが出にくくなる食べものもある。(大豆アレルギーの人でも、しょう油や味噌は食べられる人もいる)

 

サバや牛乳で体調が悪くなっても、アレルギーではないかもしれない。
(サバは仮性アレルギー、牛乳は乳糖不耐性の可能性もある)

 

花粉症やラテックスアレルギー(天然ゴムに対するアレルギー)と食物アレルギーの関連性。

 

食物アレルギーと言う比較的狭いテーマに絞ることで、充実した解説になっていると思います。

 

安心して食事ができる!食物アレルギーキャラクター図鑑 [ 赤澤晃 ]