好きなことを知っている人は、しあわせ

好きなことを知れば幸せになれる。好きなことが分からないと幸せになるのは難しい    

医療探偵「総合診療医」山中克郎 (光文社新書)


 

 

 

医療探偵「総合診療医」 原因不明の症状を読み解く [ 山中克郎 ](光文社新書

電子書籍版もあります)

 

 

おそらくはNHKのドクターGに出演していた先生で本を出せば売れそうという発想で企画された本。第一章から三章までで、ドクターGの番組3回分ぐらい。第4章は、著者が総合診療医になるまでの経緯、総合診療医の制度のあり方や研修医制度と総合診療と言った内容になっています。

 

医療探偵というタイトルがついてますが、どちらかと言うと複雑なパズルや連立方程式をとくように病名を明らかにしていきます。番組を意識してか、研修医による「とりあえずの診断」も所どころに出てきます。


また、この本では「めくらまし」と呼ばれているミスリードを誘う情報も、患者の情報の中に含まれています。(ここら辺は少し医療探偵っぽいかもしれません)

 

どの科に行けば良いのか最初から分かるような疾患は除かれているので、感染症や自己免疫疾患、「認知症のような症状だが病名が分からない」と言った症例が紹介されています。

 

医師のほうから患者に対する要望としては、患者側が勝手に自己診断をしないでほしい。自己診断をするのではなくて、問診がスムーズに進むように、メモなどしてから受診するのが良いとのことです。
病気になってしまってからだと、スムーズな問診とかを考える余裕がないかもしれないので、元気な時に予習というか予行練習しておくと役立つ時もあるかもしれません。

 

実質的には読むドクターGと思っておけば、それほど違ってないと思います。

 

 

医療探偵「総合診療医」 原因不明の症状を読み解く (光文社新書) [ 山中克郎 ]

電子書籍

医療探偵「総合診療医」〜原因不明の症状を読み解く〜【電子書籍】[ 山中克郎 ]

医師と患者、ふたつの視点で考えるアトピー性皮膚炎 [ 古江増隆 ]他


 

医師と患者、ふたつの視点で考えるアトピー性皮膚炎 [ 古江増隆 ]

 

同内容のホームページ(無料)九州大学皮膚科学教室

アトピー性皮膚炎についていっしょに考えましょう。



一見小冊子のような薄い本ですが、内容は豊富な1冊。
医師の視点では科学的な内容を中心に、患者の視点では心理面の問題を中心に扱っています。

 

アトピー性皮膚炎の原因に関しては遺伝的な要因による皮膚のバリア機能の異常が主な原因と言う立場です(生まれつき皮膚が弱い人がなりやすいという考え方)。

一方アレルギーは多くの場合、無視しても良いという立場です。特殊なアレルギーが見つかった場合のみ対処し、ダニアレルギーの大部分は無視しても良いとしています。

 

また体質は遺伝子によって決まってしまうので、その部分を治療することは出来ない。そのため症状をなくして普通に生活が出来ることを目標にすべきという立場です。

 

アトピーに関わる遺伝子は多数あり、治りやすい人から治りにくい人まで様々であることも認めています。

 

またステロイド薬などの副作用も詳しく説明されており、現実問題としては医師が副作用に注意しながら処方するしかないという立場です。

 

その一方で、アトピーが良くならない人の大部分は、ステロイド忌避(意図的な拒否から何となく恐怖を感じている人まで様々)が原因と言うことも強調しています。ステロイドを塗る範囲が狭すぎたり、塗る回数が少なすぎるためにアトピー性皮膚炎が良くならないと強調しています。(日本では通常5グラムのチューブでステロイドが処方されるのも、塗る量が少なくなる原因だとしています)

 

また症状が軽快した後も、再発防止のためステロイドを使ったプロアクティブ治療を続けることを推奨しています。(にきびのCMで有名なプロアクティブとは無関係・・・予防と言う意味では似た意味かも知れませんが完全に別物です)

 

一方患者の視点としては、心理面を中心に、かゆみへの対処や病気との向き合い方が書かれています。アトピーを治すという考えにとらわれるのではなくて、完全には良くならない場合には、アトピーと付き合っていくという発想で書かれています。

アトピー性皮膚炎患者の親としての対処法という項目があるのも特徴。

 

全体的に非常に論理的、科学的な内容になっており、心に余裕のない状態で当事者の人が読むのはつらいかもしれません。一方客観的な立場で考えることの出来る人なら色々と参考になりそうです。

 

 

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医師と患者、ふたつの視点で考えるアトピー性皮膚炎 [ 古江増隆 ]

 

同内容のホームページ(無料)九州大学皮膚科学教室

アトピー性皮膚炎についていっしょに考えましょう。

好きになる救急医学第3版 [ 小林国男 ]


 

好きになる救急医学第3版 [ 小林国男 ]

 電子書籍あり

 

文字通り救急医学の入門書です。
特に救急救命士の資格と業務について詳しく説明されています。
各章の冒頭と終わりには、先生と犬のベル君の会話が収録されていて
時間のない高校生の場合、その部分だけを読んでも、ある程度参考になりそうです。

 

現場に居合わせた人による119番。(可能な場合は応急手当)
救急車の中でのプレホスピタルケア。(救急救命士でもある救急隊員による処置)
そして病院での治療が始まります。
ドラマやドキュメンタリー番組で見たことのある救命救急センターでは、
実際にはどんな治療が行われているのか。外傷、熱傷(火傷)、急性中毒と言ったテーマ別に順番に見て行きます。(この部分には、一般人や高校生には少し難しそうな内容も含まれています。解剖学などを学んでから読むと理解が深まりそうです)

 

現在では救急車で現場に急行する救急隊員と、病院などに勤務する看護師さんは
完全に別の職種になっているので(両方の資格を持ってる人もいるとのこと)、救急医学に興味を持った高校生は、どちらの仕事が自分に向いてるか考えならが読んでみるのも良さそうです。

 

救急医学は専門性が高く一般の人向けの本自体が少ないので興味を持った人には貴重な1冊だと思います。


この本は高校生の進路選択に役立つかもと思ってブログを書き始めたら、妙に偉そうな書き方になってしまいました。素人のおせっかいだと思っていただければ幸いです。

 

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好きになる救急医学第3版 [ 小林国男 ]

建築家 池原義郎早大名誉教授死去

www.asahi.com




大学には色々な専門の先生がいますが、建築家は少し特別という気がします。1990年代の早稲田大学で、そんな特別な存在だったのが、亡くなられた池原義郎教授。

 

一般には西武球場の設計者として有名ですが、大学内では所沢キャンバスの校舎を設計した人として有名でした。当時の西早稲田キャンパス(現在の早稲田キャンパス)や戸山キャンパスに通学していた人には記憶に無いかもしれませんが、早稲田(高田馬場)から遠く離れた所沢キャンパスに通っていた自分にとっては、池原教授の設計した校舎には色々な思い出があります。(ちなみに西武球場と所沢キャンバスは直線距離では近いのですが、公共交通機関を使って移動しようとするとバスと電車を乗り継いでいく必要があり、かなり不便でした)

 

所沢キャンパスの校舎は丘陵地の地形を活かしつつ、細長い建物をつなげたような作りで、学校の校舎としては非常にユニークな作りです。大学の場合、講義が終わるたびに頻繁に教室を移動するのですが、建物と言えば四角い箱のようなものという固定観念が染み付いている学生や教員にとって、所沢キャンパスは迷路のようとか、迷子になると評判は散々でした。

 

さらに校舎に対する不満が頂点に達する出来事もありました。
壁のコンクリートにひび割れが多発して、ついに雨漏りするようになってしまいました。当時学内のサークルが発行していた学生向けの同人誌には、学生の取材に応じて釈明するコメントが掲載されていました。(現在は、きちんと補修されているはずです)

 

しかし今振り返ると、良い点も沢山ある校舎だった思います。


まずロビーを兼ねてるような広すぎる廊下。当時はサークル用の部室がない代わりに、広い廊下に、ついたてと椅子、テーブルを置いて、サークル用のスペースにしていました。閉鎖的だった昔の学生会館と比べて非常にオープンな雰囲気でした。

 

また丘陵地に立てられているので正面から入らなくても、あちこちから出入りできたり、当時は屋上に上がれたりして、気持ちに余裕がある時には面白い校舎でした。

 

また校舎の周囲に、陸上競技場、野球場、体育館、50メートルプールがコンパクトに配置されていること。バス停と校舎の間の通学路では、一般の学生よりも早く登校してきた陸上部の部員達が朝のトレーニングをしていて、一般の学生の気分も盛り上がってたような気もします。(箱根駅伝などで活躍している時は特に、)

 

なにより良かったと思うのは、所沢の校舎は、教室と教室、食堂、図書館、スポーツ施設などの移動の際に、学生達をかき混ぜて、出会いを演出する人間交差点の役割を果たしていたこと。それも知らない人同士の大都会のスクランブル交差点ではなくて、見覚えのある人とすれ違う近所の交差点。居場所が無いと疎外感を感じる人がいる一方で、色々な人と顔見知りになれる面白い空間だったと思います。インターネット上の空間で似たような考えの人ばかり集まってしまうと言われている現在、学生同士を適度にかき混ぜる校舎は便利さ以上の何かを与えてくれるのではないかと思います。

 

直接教わったことも面識もない先生に言いたい放題書いてしまったことをお詫びするとともに、お悔やみ申し上げます。

アトピー性皮膚炎 江藤隆史 著/尾形道夫 インタビュー・構成

アトピー性皮膚炎 (シリーズ専門医に聞く「新しい治療とクスリ」) 単行本 – 2016/4
江藤 隆史 (著), 尾形 道夫
単行本: 172ページ
出版社: 論創社 (2016/04)

 

 

一言で言うとアトピー性皮膚炎のガイドラインを断定口調に書き換えた本です。
アトピーガイドラインは2種類あるようですが、色々な治療法の推奨度とエビデンスレベルが書かれています。これでは分かりにくいので、全て断言口調で書いてしまえという発想です。(これが皮膚科医の意向なのか、取材者の意向、あるいはエビデンスに関する理解不足によるものなのかは、この本を読んでも分かりません)

 

科学的なデータを出しても納得しない人のために、ニュースステーションや女性セブン、アトピーの女王(雨宮処凛)から問題のある治療を紹介して、標準治療が優れていることを納得させようとしています。

 

標準的な治療で良くなる人は普通に治療して良くなるわけで、わざわざこういう本を読まないのではないかと思います。問題なのは、普通の治療を受けてるのに良くならないと思っている人。そういう人に、ステロイドが弱すぎ、量が少なすぎと納得させる説明になってるかと言うと、かなり疑問です。

 

そもそもの話として、余程酷い治療を受けたのでなければ、医師が標準治療に従ってるかどうかで医師を評価すると言うのは本末転倒のような気がします。

 


今回は悪口ばかりになってしまったので商品リンクはなしで。
興味のある人は、アマゾンや楽天ブックスなどを見てください。

好きになる免疫学 [ 萩原清文 ]


 

電子書籍版あり


15年以上前の出版ですが、最近でも紀伊国屋書店で平積みにされていたロングセラー。免疫学は難しいと感じている人たちに重宝されているようです。

 

免疫学は細胞同士が戦ったり協力したりと、高校までの生物では、あまり学習しない細胞の間のコミュニケーションに関する内容が多く、難しそうなイメージがあります。

しかし、この本では著者(荻原清文)本人の漫画で、細胞同士の戦いや協力が、コミカルかつ分かりやすく書かれています。(学習漫画には、漫画の部分はプロの漫画家が担当するものが多いのですが、やはり本当に理解している人の描く漫画は分かり易いような気がします。特に普通の説明だと難しいサイトカインの働きが、漫画で見ると納得できました。)

 

出版時期の影響なのか、T細胞とB細胞の話が中心。

 

利根川進博士がノーベル賞を受賞した研究も、設計図(遺伝子)の切り貼りとして
分かりやすく説明しています。

 

後半の第2部では、アレルギー、リウマチ、がん、エイズを扱っていますが、
この本の出版以後に明らかになったことも多そうです。

アトピー性皮膚炎のことは全く言及していませんが、これは、ある意味正解だったのかもしれません。(原因が良く分かってないので)

 

イラスト(漫画)が多いので二日ぐらいあれば読めそうです。

 

監修者である多田富雄の前書き(推薦文)付き

 

楽天ブックス

好きになる免疫学 [ 萩原清文 ]

ときめく微生物図鑑

ときめく微生物図鑑 [ 塩野正道 ]

ときめく微生物図鑑 [ 塩野正道 ]
価格:1728円(税込、送料無料) (2017/5/28時点)


 

ときめく微生物図鑑 [ 塩野正道 ]

 

ときめくきのこ図鑑に続いての、ときめく図鑑シリーズ。


微生物図鑑と言うタイトルですが、病原菌などの細菌図鑑ではなくプランクトンの図鑑です。(ときめくプランクトン図鑑だと、テーマがマイナーすぎるので、医療系の人などには馴染みのある微生物をタイトルに付けたのではないかと思います)

 

図鑑に収録されている微生物で一番有名なのは、健康食品としても販売されているミドリムシユーグレナ)。葉緑体を持つ植物プランクトンで、長い鞭毛を使って泳ぎまくるというもの。

一方最近では話題になることの少ないクロレラは、ゾウリムシ(単細胞の動物プランクトン、繊毛虫)と共生した状態で紹介されています。

 

植物プランクトンは、単細胞のままで進化を続け、群れを作っているものも多くある。こうしたことが綺麗な写真からも伝わってきます。

 

一方動物プランクトンは、ミドリゾウリムシ以外は、ミジンコやエビの仲間が中心です。動物プランクトンになると、もう微生物と言うよりも、小さなエビとか小さな虫と言った感じです。(東京湾アクアラインで有名なウミホタルも動物プランクトン。実際に光るそうです)
植物プランクトンと違って、動物プランクトンは単細胞生物から、既に随分複雑な多細胞生物に進化している感じです。

 

後半の章ではでは、プランクトン以外の微生物、食物連鎖と分解者の役割と言った内容を駆け足で見て行きます。(うんちが土になるというコラムは衝撃的でした)

 

普通微生物学と言うと、シャーレの寒天培地に培養してから顕微鏡で観察するイメージです。しかしプランクトンの場合、水と一緒に直接顕微鏡で観察できるので顕微鏡を買ってくれば普通の人でも観察できそうです。

 

小中学校での「小さな生き物の観察」を懐かしむのに良さそうな内容。
人によっては、もう一度ときめく微生物図鑑になるのかもしれません。

 

楽天ブックス

ときめく微生物図鑑 [ 塩野正道 ]